〈冬虫夏草〉 最近の談合事情
2020/10/20コラム
冬虫夏草
最近の役所の状況を知ろうとすれば、役所の犯した犯罪を検証することで見えてくるものがある。
9月末から10月に入って、競争入札妨害に関して事件になったもののいくつかを見てみた。
【ケース1】
丹波市の水道管工事で入札情報を漏らしたとして、官製談合防止法違反などの罪に問われた元職員の男に、神戸地裁は、懲役1年6か月・執行猶予3年を言い渡した。判決によると、元職員は2019年9月、工事の設計金額などを建設会社元役員に漏らし、最低制限価格と同じ金額でこの建設会社に工事を落札させたとしている。
※水道管工事であれば、特殊資材を使用しているとは判断しにくく、最低制限価格をどうしても聞き出さなければいけない理由がわからない。
そのことから判断すると、最低制限価格は1~2%程度の幅で変動させていたのではないかと思われる。最低制限価格を分かりづらく操作する手法をとる役所は有る程度存在するが、意味不明である。そもそも最低制限価格は品質確保のための物であり、変動させるなら、それなりの理由が必要なはずである。まあ、最後のカギは握っていたいという役所の感覚なのであろう。
【ケース2】
北海道胆振総合振興局で農地整備を担当していた容疑者が、2016年に北海道が発注した厚真町の農地整備工事の入札で、胆振地方の建設業者に工事価格を漏らしたなどとして官製談合防止法違反の疑いで逮捕、送検されたもの。
同容疑者は、複数の業者から数年間に渡って、「スナックなどで接待を受けた」また「業者からビール券など数10万円分を受け取った」とも話している。
※農地整備工事は特殊重機や土留め防止柵など、見積りものを含んでいる可能性もあるので、工事価格の把握は需要があるのかもしれない。
ただ、2016年の懸案であることや、供応、ビール券(恐らく中元・歳暮)では、警察の手柄としては薄い。同容疑者は随分派手にやっていたのであろうし、地元建設業者はバブル期の下請け業者程度にしか思っていなかったのではないだろうか。
いずれにしても、巨悪がいなくなれば小悪党が目立つ時代である。
【ケース3】
茨城県石岡市が発注した清掃業務を巡る官製談合事件で逮捕された教育委員会の課長が事前に業者に提出させた見積金額を元に入札予定価格を設定し、指名競争入札で参加予定の業者名を漏らした疑いが持たれている。情報を得た清掃会社が予定価格950万円に対して946万で落札した。
※役所に積算能力がない、典型的な例。そして、見積りで世話になった業者に、参加者数を教えたのであろうが、愚かな行為である。業者も他の業者にコンタクトを取ったことで露見したのであろう。ある意味、両者とも素人で微笑ましいい?
寄稿者:冬虫夏草
長きに渡り、地方自治体における総合評価制度の実際の現場で評価に携わってきた
現在も総合評価制度を探究し、ゼネコンはじめ多くの建設企業から相談を受けている