見たもん勝ち ～建設業応援団～
【高校生作文コンクール・不動産・建設経済局長賞】 「ターニングポイント」西田吏佐さん（富山県立高岡工芸高等学校建築科2年）
2020/12/01建設時事
建設メール
九年前の東日本大震災で多くの人の命が奪われた。また、多くの建築物も倒壊した。私は小学校六年生の時、震災が起きた岩手県の陸前高田市を訪れた。訪れた時は震災から既に六年が経過していたが、今にも崩れそうな建築物がそのまま残り、津波の跡が刻まれていた。むき出しの骨組みを見ると、丈夫なはずの建築物がこんな風になってしまうのかと、とても強い衝撃を受けた。このとき私は、この建築物がもっと強ければ、多くの命を助けられたのではないかと思った。そして、災害に強い建築物をつくりたいと思った。それが建築と私の最初の出会いだ。
高校は建築科に入学した。工業高校だからこそ学べることが数多くあった。その中でも、建築物に必要なことは耐久性や耐震性だけではないということが強く印象に残った。私は高校一年生の夏、初めての設計コンペに挑戦した。設計コンペでは家族構成、趣味、間取り、形やデザインなど、思っていたよりも考えなければいけないことがたくさんあった。習っていないことも多く、勉強のために建築関係の本を開いてみた。すると、被災地復興の特集があった。六年前、何もなくなってしまった場所に建築物が建ち始めたことを知り、希望の光がそこにあると感じた。仮設住宅は再利用され、新築の建築物も並んでいた。
災害対策をした建築物の特集が載っているのかと思い眺めていると、ただ強い建築物が建っていただけではなかった。そこには、使用する人々を笑顔にする建築物があった。地元の木材を多く取り入れたデザインは、傷ついた心を癒し、子供たちの笑顔を取り戻そうとする設計者の想いがあふれていた。まだまだ完全な復興とはいえない現状だが、建築物は、人々の命や財産を守る重要な役割を果たしていると改めて感じた。それと同時に、人々の笑顔を守ることができる、人々の笑顔をつくることができることを知った。それがきっかけで、私も使う人のことを考えるようになった。その結果、コンペで賞をいただくことができ、表彰式では実際に建築士として活躍されている方や大学の先生から表現の仕方など今後の私の糧となる助言をいただいた。そして、私はもっと建築の知識や技術を増やし、人とのつながりを大切にした、安心して過ごすことができる建築物をつくれる建築士になりたいと強く思うようになった。
私は現在も設計コンペに挑戦している。今度は北陸地域に限定した、地域の特性を生かした設計が求められている。地域のコミュニティを考えながら設計に励んでいる。日常の生活を快適に過ごせることはもちろん、いざというときに命を守れる建築物をつくる建築士になりたい。これが私の夢である。
