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業界と連携した取り組みに意欲を見せる斉藤大臣
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斉藤鉄夫国土交通大臣は2022年の新春インタビューで、防災・減災、国土強靱化やインフラ老朽化対策について、中長期的な視点に立って加速化・深化させるほか、建設業の処遇改善に向けて、技能者の賃金引き上げの好循環が続くように官民が連携し、全力でダンピング受注の排除や適正な請負代金での下請契約を進めることに意欲を見せた。また、インフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)に対して、国交省一丸となって変革に果敢に取り組むとし、22年を「挑戦の年」と位置付けた。
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―防災・減災、国土強靱化、老朽インフラ対策など、今後の社会資本整備・更新の進め方は
斉藤 社会資本の整備は未来への投資であり、自然災害から国民の命と暮らしを守るとともに、生産性の向上や民間投資の誘発を通じて、地方を含めわが国の経済成長を支えるもの。防災・減災、国土強靱化やインフラ老朽化については、21年度補正予算で「5か年加速化対策」の2年目として必要・十分な予算を確保した。中長期的な視点に立った対策を、さらに加速化・深化させる。
また、22年度当初予算案においても「安全・安心の確保」「持続可能な地域社会の形成」「経済成長」の実現に向け、必要な予算を盛り込んだ。激甚化・頻発化する自然災害や加速化するインフラの老朽化、デジタル革命の加速、2050年カーボンニュートラルの実現といった近年の社会情勢を踏まえ、質の高いインフラの整備を中長期的な視点に立ち、必要な予算を確保しつつ戦略的かつ計画的に推進していく。
―建設業界の次代を担う若者を確保・育成していくためには何が必要か
斉藤 建設業の処遇改善に向けては、業界と連携しながら社会保険への加入徹底とともに、公共工事設計労務単価を9年連続で引き上げ、技能者の賃金引き上げを進めている。賃金の引き上げが設計労務単価等の上昇を通じて、さらなる賃金の引き上げにつながる好循環が継続されるよう、引き続き官民一丸でダンピング受注の排除や適正な請負代金での下請契約の推進などに全力で取り組む。建設業界には、賃金下落の引き金となるダンピングは厳に慎むこと、そして適切な請負金額での下請契約の締結と技能者への適切な賃金の支払いの徹底をお願いしたい。
加えて、建設キャリアアップシステムのさらなる普及促進に努める。技能者登録数は既に76万人(21年11月末現在)に達しており、今後は登録促進の段階から現場利用の促進と、メリットを技能者に実感してもらえるステージに進めるべく、さらなる利用促進策に力を入れたい。
また、建設業の働き方改革を進めるため、新・担い手3法に基づき、工期の適正化や施工時期の平準化の推進等に取り組んでいる。工期の適正化に向けては、週休2日の確保等を適正な工期設定に当たっての考慮事項として位置付けている「工期に関する基準」について、民間発注者等も含め広く関係者への周知徹底を図るので、建設業界にも協力をお願いしたい。施工時期の平準化では、国交省直轄工事において国庫債務負担行為の活用のほか、繰越明許費の活用等により適正な工期を設定する取り組みを進めている。さらに、全ての地方自治体について平準化の進捗・取組状況を「見える化」し、取り組みが進んでいない地方自治体に対しては、改善に向けた個別の働き掛けを引き続き行う。
生産性向上では、i-Constructionを推進してきた。これまで対象となる国交省発注工事の約8割でICTが活用される一方、地方自治体や中小企業への普及促進が課題として残っており、ICT施工未経験企業への講習会の実施、3次元設計データ作成等に関して助言を行う制度の全国展開など、ICTを導入しやすくなるような環境整備を推進する。
建設業が「給与がよく、休暇がとれ、希望が持てる」新3Kの魅力的な産業となるよう、業界等と連携しながら担い手確保に向けた取り組みを、しっかりと進めたい。
―社会資本や公共サービス変革の鍵を握るインフラ分野のデジタル・トランスフォーメーション(DX)、カーボンニュートラルをどのように推進し根付かせていくのか
斉藤 インフラ分野においては、公共工事の現場で非接触・リモート型の働き方への転換を図るなど、感染症リスクに対しても強靱な経済構造の構築を加速することが喫緊の課題。インフラ周りをスマートにし、従来の「常識」を変革するインフラ分野のDXを進める。遠隔での監督検査やデジタルデータを活用した配筋検査等の試行、3Dハザードマップの公開等を進めており、21年度中には施策ごとの今後の工程を明らかにした「アクションプラン」を策定する。昨年12月には私を本部長とする国土交通省DX推進本部会議が発足しており、省一丸となってインフラ分野のDXによる変革に果敢に取り組み、22年は「挑戦の年」となるよう、業界等と連携しながら進めていきたい。
インフラ分野の脱炭素化に向けては、CO2削減に資する材料、建設機械、施工方法等の観点で取り組みを進める必要があると考えており、工事発注時にカーボンニュートラルに関する技術提案を評価して企業選定する試行等を行いたい。