〈壁耳〉 10年後の建設産業はどうなる
2016/10/06記者の目/論説
建設メール
記者 11日に建設産業政策会議の初会合が開かれますね。10年後の建設産業を見据えた政策を検討するようですが。
デスク 7月の中央建設業審議会で国土交通省が設置を表明していた「新たな検討の場」の正式な会議名が決まったもので、建設産業の将来展望や建設業関連制度の基本的な枠組みを検討する場となる。制定から約70年が経過した建設業法をはじめとして、請負契約、経営事項審査(経審)、技術者制度、入札契約制度など、10年先を見据えて建設業関連の重要な制度を再検討する会議であり、議論の行方を業界全体が注視しておく必要があるだろう。
記者 内容が多岐にわたっているため、少し分かりづらいですね。
デスク 具体的な議論の方向性はまだ分からないが、「生産性の向上」と「現場力の維持」がキーワードになりそうだ。現場の生産性向上の取り組みはi-Constructionを通じて進んでいるため、今後は建設業関連制度のあるべき姿を生産性向上の観点から検討するということ。議論の結果、必要に応じて建設業法はもちろん、経審や技術者制度などが改正されることになれば、業界を取り巻く環境は大きく変わることになる。
記者 建設産業政策の大きな転換期ということでしょうか。
デスク 建設産業政策はこれまでも10年、5年単位で大きく変わってきた。20年前はゼネコン汚職事件やバブル崩壊後の民間建設市場の大幅な落ち込み、一般競争入札の拡大が問題だった。10年前は過剰供給構造に伴う再編・淘汰、談合廃絶、ダンピング受注の増加、構造計算書偽装問題発生といった背景があった。5年前からは災害対応や維持管理を担う企業の不足、技能労働者の賃金低下、若手入職者の減少、価格競争の激化と地域建設企業の疲弊、東日本大震災後の対応などが課題となっている。
記者 わずか10年前までは過剰供給構造だったことが信じられません。
デスク それだけ時の流れが速いということだよ。漠然とした不安だった担い手の確保は、あらゆる産業で現実の問題となり、人材獲得競争が激化している。女性の活躍も進んだ。海外市場への展開も視野に入れなければならない。誰も正確に予測できない将来を展望した上で、あるべき姿を検討しなければならないため、難しい議論になる。
記者 そういえば「コンクリートから人へ」なんて時代もありましたね。
デスク そのことはもう忘れて、未来に希望を持とうじゃないか。