【一括下請負+記者の眼】 「実質的関与」の基準明確化を通知
2016/10/14記者の目/論説
建設メール
国土交通省は建設工事に際して実質的に施工に携わらない企業を施工体制から排除し、不要な重層化を避けるため、一括下請負(丸投げ)に該当しない「実質的関与」の判断基準を明確化した。
発注者から直接請け負った元請業者と、それ以外の下請業者が果たすべき役割を具体的に定めることで、一括下請負の禁止をさらに徹底する。14日付で土地・建設産業局長から建設業関係105団体、都道府県・政令市、中央政府や高速道路会社、独立行政法人などの主要発注機関へ通知した。
具体的には▽施工計画の作成▽工程管理▽品質管理▽安全管理▽技術的指導▽その他―の6項目別に元請業者と下請業者が、それぞれ果たすべき役割を定め、元請業者には全ての事項の実施を求める。下請業者の場合、各事項を主として行う必要があることを整理した。
また、昨年の基礎杭工事問題を踏まえ、下請が請け負った工事と同一種類の工事をさらに下請に出す場合、現場作業の実地技術指導など工事現場での関与を必須とすることで、商社や販売代理店を施工体制から排除する。
従来の「一括下請負に関するQ&A」も一部内容を見直して通知に添付した。今回、新たに機器・設備の製造業者が設置工事を一次下請として請け負ったものの、実際の工事は認定工務店(二次下請)が行った場合、設置マニュアルの作成や工務店の認定のみでは現場で技術指導を行ったとは言えず、一括下請負に当たることを説明。この場合は機器・設備の売買契約などを締結し、建設工事の請負契約自体は元請負人が直接認定工務店と締結することが適当であることを記述した。
〈記者の眼〉
新通知により、特に商社や販売代理店は丸投げと判断されないために、工事に携わらないのであれば売買契約を結ぶ必要があり、請負契約を結ぶのであれば工事に関与しなければならない。ただ判断基準が明確になったとはいえ、商社や販売代理店が自ら丸投げに該当するという認識に改めなければ、状況は変わらない可能性もある。効果的な運用の鍵を握るのは個別工事の現場であり、発注者、元請業者、下請業者の関係者全員が明確になった判断基準を正しく理解しなければ意味がない。透明性が確保された施工体制の確立が求められる。