【ICT土工事例集+記者の眼】 地方での活用拡大へ実例示す
2016/11/08記者の目/論説
建設メール
国土交通省は建設現場の生産性向上を図るi-Constructionの先行施策の一つであるICT土工に地方自治体や地域の建設業者からも積極的に取り組んでもらうため、事例集を作成した。直轄工事や自治体発注工事の実例を現場の声を交えて紹介するとともに、ICT活用工事の流れを分かりやすく説明した様式記入例集も示している。事例集は現在開催中の秋季ブロック土木部長等会議で配布しているほか、ホームページにも掲載しており、今後も周知と内容の充実を図る見通しだ。
ICT土工について直轄工事では補正予算分を含めて年間約970件が公告予定となるなど取り組みが広がっている。今後は自治体発注工事での活用や直轄工事でもより多くの建設業者に参加してもらうことが課題となっており、事例集を通じて具体的なイメージを持ってもらい、導入や活用の拡大につなげたい考え。
なお、事例集で関東甲信越関係では▽H27古河中田新田地区下流築堤工事(茨城県古河市)、河本工業▽H27南川崎地区堤防整備工事(埼玉県八潮市)、戸邊建設▽国川地区地すべり対策工事(新潟県上越市板倉区)、田中産業―の事例紹介と施工者の現場の声が取り上げられている。
〈記者の眼〉
直轄工事で実施中のICT土工のうち、施工者の8割以上は地域の建設業者が占めており、事例集でも大手ゼネコンは取り上げられていない。本年度から始まったばかりではあるが、3次元起工測量による期間短縮、精度や安全性の向上、均一な施工、作業員の省力化など生産性向上の面で効果があることを指摘する現場の声が目立つ。また、若手や未熟練技術者の育成に役立つとの指摘も多い。「次世代の現場」であることを認識し、大手の建機レンタル会社に丸投げするのではなく、自分たちでやるべきことを見出そうとする地域の建設業者も出始めている。ICT土工に関心を持たない、持てない地方自治体や地域の建設業者が多いことは事実だが、関心を持つための入口として事例集は役に立つだろう。