【無電柱化+記者の眼】 低コストや多様な整備手法を検討
2016/11/16記者の目/論説
建設メール
国土交通省は、欧米やアジアの主要都市と比較して整備が遅れている道路の無電柱化を一層進めていくため、低コスト手法の普及・技術開発や事業者・地元調整のあり方、狭い道路での整備手法を検討している。低コスト手法に関しては、管路を浅く埋設する浅層埋設や小型ボックス活用埋設についてモデル施工を通じて施工性を確認した上で技術マニュアルを作成し、全国に普及させるほか、さらなる技術開発やPFI手法を活用して低コストの無電柱化を図る。
また、現在の計画は事業者の視点が中心で生活者の視点が不十分であることから、各地方ブロック・県・地元協議会に地元代表者のメンバーを含めるなど、事業箇所に関する合意形成を図る新たな体制の構築も検討する。地元との調整に向けては合意形成を支援するガイドラインの作成、道路空間の地上機器のあり方を検討していく。
さらに歩道幅員が狭い道路では従来の電線共同溝方式の整備に限界があるため、多様な整備手法を検討する。取り組みの方向性としては、ケーブルを地中に直接埋設する方法や電線類の一部を軒下や壁面に設置する軒下配線、無電柱化する道路の裏通りから配線する裏配線を想定している。
なお、日本全国の無電柱化率は1%で、東京23区が7%、大阪市でも5%と著しく遅れており、年度ごとの整備延長は減少傾向にある。
〈記者の眼〉
無電柱化を進める上で地上機器の設置が景観を阻害し、道路との調和が取れていないことが問題になる場合も多い。最近では地上機器の形状を工夫したり、住民の協力を得て民地に地上機器を設置する事例が出てきたとはいえ、課題は山積する。有識者からは地上機器の高さを低くしてバス停のベンチ代わりにすることや側面に広告を貼れるようにして維持管理費用を稼ぐといった柔軟な発想に基づく新たな提案も出ている。地上機器の小型化に向けた技術開発を含めて、まだまだ工夫の余地がありそうだ。