現場が抱えるジレンマ① 仁義なき人材引抜き-働き盛り 1本釣りも
2015/04/01特集企画/PR
建設メール
建設業における担い手の確保・育成が重要な課題となる中、建設業者はもとより、発注者である行政機関等も担い手不足に悩んでいるため、現在は「売り手市場」となっており、限られた人材の奪い合いが起きている。
民間から行政機関へ転職し、受注者側から一転、発注者側に回ったという話をよく耳にする。しかし、建設業の経営者が頭を悩ませているのが、入社2・3年目の若手ではなく、30~40代の働き盛りの世代が「1本釣り」で引き抜かれるケースだ。ベテランの技術者は現場経験が豊富で技術力も高いことから人気がある。予算規模が大きく、工事発注量が多い、政府系の独立行政法人などでは秘密裏に入社試験を受けるように声を掛けている現実があるという。
ある中堅ゼネコン幹部は「入社以来、一から育てあげて、ようやく一人前になった頃に声を掛けてくる」と困惑する。当然ながら会社には秘密にして試験を受ける訳だが、現場が休みの日曜日に試験を行うため、会社側は把握することが困難というジレンマに陥っている。
もともと公務員志向があったものの、試験に合格できずに民間企業に就職した人は、毎年のように公務員採用試験を受けているという話も聞く。
業界全体から見れば、受発注者間で技術者が異動しているだけなのだが、「発注者側の技術者が足りずに仕事が滞ることも大きな問題であるため、痛し痒しの面がある」(地場大手ゼネコン社長)と複雑な胸の内を明かす。
日本建設業連合会は3月、「建設業の長期ビジョン」の中で、新規入職者90万人確保を打ち出した。限られた人材を奪い合うのではなく、他産業から転職したいと思わせるような建設産業界自身の魅力が求められる。