〈壁耳〉 ICT土工は地方でも普及拡大の動き
2016/12/08記者の目/論説
建設メール
記者 国土交通省が進めるICT土工を地方自治体や中小建設業者にまで普及拡大させる動きが来年度は本格化しそうですね。
デスク 実演型の支援事業として静岡県と茨城県では国交省も参画する支援協議会を本年度に前倒しで立ち上げてICTモデル工事の選定や活動内容などの検討に入ることが決まった。具体的な取り組みを進める団体を積極的に支援するため、来年度は地方整備局が主体的に参画し、各ブロック1カ所で支援協議会の設置を目指す。国交省としては将来的に全都道府県で支援組織を設置したい意向があるようだ。
記者 茨城県の協議会には地元の測量関係の団体が入っていると聞きましたが、珍しいですね。
デスク 県が声を掛けたと聞いているけど、危機感があると思う。本年度から国交省のICT土工が始まり、ドローンによる起工測量が行われているが、原則として施工受注者が今後の施工のために行うものであり、一般的な測量とは異なる。「起工測量は測量ではなく、計測だ」という声もある。やはり事業の初期段階で行う測量が本来の活躍の場になるが、いきなり3次元測量が原則になってしまうと準備が間に合わない。地元の測量業者として県が計画する事業の初期段階から3次元データを使ったICT活用工事へ参加できるように勉強しましょうということではないか。
記者 施工に関しては地元の建設会社で十分に対応できるのでしょうか。
デスク 当然、大丈夫だろう。建機レンタル会社の協力があるとはいえ、国交省直轄工事で進むICT土工のうち、8割以上は地域の建設業者が行っている。茨城県の場合は独自の「施工者内容協議型」としてモデル工事を発注すると聞いた。支援協議会で出たICTの検証内容などを受発注者で協議しながら工事に反映していくようだから、当面はこのタイプが主流になるだろう。
記者 他の自治体への波及が期待されます。
デスク 発注者の自治体、受注者となる地元建設業者にとってメリットがなければ意味がない。それには成功事例の情報共有が不可欠であり、まずはモデル工事の成果が注目される。直轄工事でICT土工を受注した地元業者も1件完成させたから、もう終わりということではないからね。自治体の発注工事でもICT土工を提案するような積極性がほしい。増加分の費用をどうするかという課題はあるが。
記者 政府の未来投資会議でi-Constructionの推進を通じて建設現場の生産性を2025年までに20%向上を目指す方針が示されましたしね。
デスク 安倍総理が発言した意味は非常に大きい。今後は地方自治体発注工事でもICT活用工事が増えるという流れは間違いない。早急すぎる導入は危険だが、いずれはICT活用工事の主戦場が自治体発注工事になることだけは忘れてはいけないだろう。