【建設キャリアアップシステム+記者の眼】 来秋の運用開始へ体制再構築
2016/12/21記者の目/論説
建設メール
建設技能労働者の資格情報や現場での就業履歴などを業界統一のルールで蓄積する建設キャリアアップシステムの来秋の運用開始に向けて、新たな運営体制が固まった。21日に開かれた官民コンソーシアムでシステムの運営主体は建設業振興基金が担うこと、組織を衣替えして新たに国土交通省や厚生労働省、振興基金、関係団体で構成する「建設キャリアアップシステム運営協議会(仮称)」を設置し、運営方針を決めることになった。
今回、システムが目指すものとして、技能労働者それぞれの経験と技能に応じた育成、処遇が受けられる産業としていくために、技能者の処遇改善や技能の研さんを生み出す基本的なインフラを業界全体で整備することが必要との考えを明確に打ち出した。
技能者に交付するキャリアアップカードは技能者の申請に基づき本人確認を行った上で、3000円程度の実費を負担してもらい交付する。有効期間は10年。将来的には技能に応じた色分けを検討するが、当面は登録基幹技能者のみゴールドカードとする。カードには技能者情報、事業者情報、現場情報を登録し、現場入場時にカードリーダーなどでカードを読み取り、日単位で現場入場実績や従事した業務の立場といった就業履歴を蓄積する。
事業者がシステムを利用する場合は事業者の規模に応じた登録料、利用料の負担が必要となる。システム利用料を負担した他の建設事業者は、技能者本人と所属事業者が同意した範囲内で技能者情報の閲覧を可能とする。
運営開始後1年で約100万人の登録が目標で、開始後5年を目途に全ての技能者の登録を目指す。
意見交換では各団体から「地方の建設業界には浸透していない」との声が多く挙がった。国交省では今後、システムの開発と並行して全国で説明会を開くなど、登録手続きや利用方法などを周知していく見通しだ。
国交省土地・建設産業局の谷脇暁局長は「システムを検討段階から実行段階に移す環境が整った」とし、次のステップへ着実に進むことに期待を寄せた。運営主体となる振興基金の内田俊一理事長は「大変重い仕事だが、腰を据えて取り組んでいきたい。全力で開発を進め、システムの運営が円滑に進むよう頑張りたい」と述べた。
〈記者の眼〉
コンソーシアムは役割を終え、今後は新たな運営協議会が立ち上がることになった。システム開発が順調に進んだ場合、いかに登録してもらえるかが成功の鍵を握ることになる。多くの団体が心配していることは特に地方で理解が進んでいないことだが、理由はメリットが分からないことに尽きると思う。処遇改善と言えば賃金を上げることで、将来的に同システムが目指すところでもある。国交省では1月以降、全国で説明会を開く意向だが、利用者に負担を強いる以上、元請業者から言われたからではなく、技能者が率先して「登録したい」と思うような分かりやすいメリットを、もっと強調する必要があるだろう。