【下請取引調査+記者の眼】 標準見積書の活用状況が改善
2016/12/27記者の目/論説
建設メール
全国約1万4000の建設業者を対象に国土交通省と中小企業庁が行った2016年度下請取引実態調査の結果、法定福利費が内訳明示された「標準見積書」の活用状況が改善されていることが分かった。元請業者が標準見積書の提示を全部または一部の下請契約で働きかけている割合は38・8%で前年度比5・6ポイント増加。下請業者が見積書を全部または一部の工事で提出している割合は46・6%で、同比10・7ポイント増えている。
また、建設工事を下請負人に発注したことがある9778業者のうち、是正指導対象となる30項目中、23項目において前年度よりも適正取引を行っていると回答した率が増加した。指導の必要がないと認められた建設業者は387業者(4・0%)で、前年度の3・1%から増えている。依然として低水準ではあるものの、過去5年間では最高の数字になった。
主な調査結果のうち、元請負人から「不当なしわ寄せを受けたことがある」と回答した業者は11・1%で、前年度比で微減に。不当なしわ寄せ内容のうち、最も多かったのは前年度と同じ「下請契約の締結が工事着手後となった」だった。
発注者から「不当なしわ寄せを受けたことがある」と回答した業者は3・6%で、前年度比1・4ポイント減少。不当なしわ寄せ内容の中では「発注者側の設計図面不備・不明確、設計積算ミス」が前年度と同様に最も多かった。
技能労働者への賃金水準を「引き上げた(予定踏む)」と回答した業者は69・8%で、前年度比1・2ポイントの増加に。引き上げた理由は「周りの実勢価格が上がっており、引き上げなければ必要な労働者が確保できないため」が、引き上げない理由では「請け負った価格が低く、賃金引き上げの費用が捻出できない」が、それぞれ最多となった。
〈記者の眼〉
標準見積書の活用状況が改善されているとはいえ、下請業者が標準見積書を提示しない理由としては「注文者が提出を求めてこなかった」「そもそも標準見積書のことを知らない」という回答も多かった。一方で標準見積書を提示した結果、内訳明示した法定福利費を含む見積金額全額が支払われる契約となったと回答した業者も目立つ。法定福利費の別枠支給を望む声は多いが、簡単に実現するものではないため、現状では元請業者へ標準見積書を提出することが課題解決の近道だろう。その前提として安定した仕事量の確保が必要であることは言うまでもないが。