現場が抱えるジレンマ⑨ 下請の社会保険料-提示分の支払い受けず
2015/04/01特集企画/PR
建設メール
ある専門工事業の総会で、法定福利費の内訳を明示した標準見積書を「元請けに提示したことがある」「提示分の支払いを受けたことがある」との業者は皆無だった。
新潟県建設専門工事業団体連合会が昨年10月に行ったアンケート調査で、公共工事で標準見積書を元請けに提出した割合は44%にとどまり、さらに提出した場合でも「5割未満の工事でもらっている」または「もらっていない」との回答は68%と、標準見積書を提示しても適正に法定福利費が支払われていない実態が分かった。もらえない理由は「理解してもらえない」「元請けの指値で支払われる」「予算がない」など。ある専門工事業者の社長は「もらえるまで見積書を出し続けるしかない」と話す。
社会保険未加入業者排除への取り組みが進展する一方で、支払いの実態について一部の発注者では「元請けからの下請け支払いチェックをすることはなく、今後もチェックする予定はない」と回答した。民間業者同士での契約にまで踏み込んで指導できないのが現状だ。
ならば元請けが仕事を受注する段階で過当競争を是正し、適正利潤の確保が大前提となるが、最低制限価格での応札が横行し、北陸ブロック発注者協議会では、いまだに複数の県内自治体で歩切りを行っていることも分かった。石川県では昨年、県内19市町に対して「歩切りの廃止」を打ち出し知事がトップに立って適正な利潤の確保へ向け動きだしている。
社会保険への加入対策の次は、発注者から下請けに至るまで、建設業界全体で、当たり前に適正金額が流れる環境づくりが求められる。