現場が抱えるジレンマ⑪ 苦渋なめる片務契約-受発注者双方が疲弊に
2015/04/01特集企画/PR
建設メール
ある地場ゼネコン営業マンは「泣き寝入りを何度も経験するなかで、片務的な契約関係に憤りも感じなくなってきた」と苦笑する。認められないのが当たり前、予算で動く発注者に、柔軟な対応を期待するのは酷なことなのかもしれないとも話す。片務的とされる発注者との契約関係は、建設業界が抱える大きな課題の一つだ。
しかし、「受注側が圧倒的に弱い立場かと言われればそうではない。昔は、発注者から採算の合わない工事の依頼が来たら、付き合いで引き請けることもあったが、今は出来ないとはっきり断る。決して発注者を困らせたい訳ではなく、付き合いをするだけの余裕が無い」とも。
厳しい状況が故に、受注には慎重。設計書の誤った解釈は損失に直結する。例えば、土砂運搬で、発注者が示した土砂量に基づきトラックの台数を算出する場合、土砂が押し固められている状態と、掘り起こされている状態とでは、体積が大幅に異なる。着工後にトラックが足りなくなったとしても発注者は工事費の追加には応じてくれない。
契約後に発生した問題は、ほぼ受注者が飲み込むしかない、請けた方の負けだ。
今、受注者は細心の注意を払い案件を吟味する。その慎重さは不調の頻発に繋がり、事業執行の停滞に及ぶ。社会資本整備の滞りは、国民生活の危機に直結する。
片務契約は一方が苦渋をなめる問題として扱われるが、その問題の先を見ると、発注者である国や地方自治体と、受注者である建設業の双方が疲弊していく問題ではないか。片務契約の解消は、受発注双方の願いでもある。