【地下空間の利活用+記者の眼】 安全技術確立へ議論開始
2017/02/07記者の目/論説
建設メール
昨年11月に福岡市で発生した道路陥没などの陥没事故や地下埋設物の損傷事故が相次いでいることを受け、国土交通省は地下空間の利活用に関する安全技術の確立に向けた有識者審議会・小委員会の初会合を6日に開き、現状と課題について議論した。小委員会では6月にも答申をまとめる。
冒頭、大西有三委員長(関西大学環境都市工学部客員教授)は「地下空間はわれわれの目に見えない場所。最近いくつかの不測の事態が起こったこともあり委員会を発足させることになった。今後、安全対策を行えるような検討をお願いしたい」とあいさつ。国交省の森昌文技監は「地下空間に関する事案は複雑化している。今後、地下空間の活用はますます進むと認識しており、特に道路、鉄道、上下水道といったインフラ整備やメンテナンスの視点とともに、安全対策をしっかりと整えていくことが必要」との考えを示した上で、検討を要請した。
地下空間の安全技術確立に向けては、官民が所有する地盤・地下水等に関する情報の共有化や地下埋設物の正確な位置の把握と共有、地下工事の安全対策および液状化対策等の安全に係る技術開発などが主な論点になる。
初会合では委員から「安全性の向上には周辺地盤の情報把握が有効。地盤情報を共有化することで適切な判断ができる」「地下空間は場所によってライフラインの種類が多岐にわたる。細かな情報の共有化が極めて大事」「市町村の台帳整備は進んでいない。自治体にもルール化が必要ではないか」「(使われていない)埋設物の確認が大変。(昔まで)さかのぼることをしなければ本当の意味で信頼できるデータにならない」などの意見が出た。
〈記者の眼〉
道路などの陥没事故は上下水道の老朽化による陥没が多く、2015年度も3000件以上発生している。約9割が陥没深さ50㎝未満の浅い陥没で規模が小さいとはいえ、毎年3000件以上発生し、10年度のように5000件以上発生する場合もある。普及が進んだ下水道は管路延長が約47万㎞に達する一方、下水管路施設の老朽化が今後は急速に進む見通しだ。布設後50年が経過する古い管路は現状で約1・3万㎞だが、10年後に約5・3万㎞、20年後には約13万㎞へと急増する見込み。また、開設から30年以上経過している地下街は全体の8割以上を占めているほか、昨年の熊本地震では建物が不同沈下し、宅地も沈下・ライフライン断絶など液状化被害が多発した。このように地下空間の安全対策は大都市の市街地に限らず地方でも課題になっているため、今後の議論の行方を注視する必要があるだろう。