【社会保険未加入対策+記者の眼】 直轄工事は4月から2次以下も加入者限定に
2017/02/24記者の目/論説
建設メール
国土交通省は直轄工事における社会保険等未加入対策を2017年度からさらに強化する。4月1日以降に入札契約手続きを行う全ての工事において、現在実施している1次下請業者への対策と同様に、2次以下の下請業者も社会保険等加入業者に限定する。ただし未加入の2次以下の下請業者が直ちに工事から排除されないよう、30日の猶予期間を設けた上で、元請業者に対して加入指導を行うことを求める。加入指導の事実が確認された場合は2次下請けで60日、3次下請け以下は90日まで猶予期間を延長できる。
また、災害などの緊急時や加入の確約があるなど、特別な理由がある場合は個別に理由を聞いて各現場で判断していく。
猶予期間内に保険加入を確認できる書類が提出されなかった場合、10月以降は元請業者に対して最終下請金額の5%の制裁金を課すほか、指名停止や工事成績評定を減点する罰則を与える。
15年度に発注した約7000件の建設関係の直轄工事のうち、2次下請以下の未加入業者として建設業許可部局へ通報されたのは約0・9%だった。そのため大きな混乱は生じないとも考えられるが、国交省では今回の対策強化の意義について「4月からは保険に加入しなければいけないという機運を醸成したい」としており、自発的な加入に期待を寄せている。
なお、国交省では中央公契連を通じて対策強化の通知文を参考送付するため、今後、地方自治体を含む公共工事発注者でも同様の対応が進む可能性がある。
〈記者の眼〉
直轄工事で2次以下の下請業者が保険未加入だった場合、10月以降は元請業者に罰則が課せられることになるが、あくまでも最終手段であり、本来であれば適用されないことが望ましい。2次以下の業者は規模が小さく、保険に入りたくても元手がなくて入れない場合もあるため、国交省としては次回の直轄工事で下請けに入る時までに保険加入が確約されていれば契約を認めるなど、一定の配慮を行う意向だ。直接契約関係にない2次下請け以下の業者を元請業者は指導しにくいという声もあるが、建設業法上、元請業者には指導・助言の努力義務が課せられている。元請業者の請負工事額に盛り込まれた法定福利費が末端の技能労働者まで確実に行き渡ることが大前提であることを、あらためて自覚する必要があるだろう。いずれは地方自治体でも同様の対応が予想されるが、その際には、ほとんど影響がないほど保険加入が進んでいることが望まれる。