【セミナー+記者の眼】 点検要領策定を機に舗装マネジメントを考える
2017/03/13記者の目/論説
建設メール
日本工業経済新聞社と全国地域活性化支援機構の共催による自治体向けセミナー、「これからの舗装マネジメントを考える」が10日、都内の都道府県会館で開催され、200人余りが参加し、ライフサイクルコストを低減させながら、的確な維持修繕を実施する方策を学んだ。
セミナーは講演とパネルディスカッションの2部構成で行われ、第1部の講演では、国立研究開発法人土木研究所道路技術研究グループ上席研究員の藪雅行氏が「舗装点検要領とメンテナンスの視点」と題した基調講演を行ったほか、茨城県土木部道路維持課課長補佐の土子浩之氏が茨城県の舗装修繕計画の取り組みを紹介し、さらに新技術として東芝社会システム事業参事の熊倉信行氏が市販カメラを用いた簡易調査手法の事例を発表した。
この中で藪氏は、昨年10月に策定した舗装点検要領を分かりやすく解説しながら、舗装を「舗装構造物」として捉える必要があるとし、修繕の履歴をきちんと残し、その情報を共有することが大切と強調した。
第2部のパネルディスカッションでは、国土技術政策総合研究所道路基盤研究室室長の久保和幸氏をコーディネーターに、国土交通省道路局国道・防災課課長補佐の武藤聡氏、北海道科学大学教授の亀山修一氏、千葉県柏市土木部道路保全課主任の吉田博基氏、1部の講演に引き続き、土子氏、熊倉氏をパネリストに招き、予算や人材が不足する中で、どのように舗装の維持修繕を行っていくべきか、活発な議論を展開した。
〈記者の眼〉
笹子トンネルの崩落事故を教訓に、トンネルや橋梁については5年度1度の点検が義務付けられたが、舗装については多少のひび割れがあってもゆっくり走れば、それが原因で大きな事故につながるとは考えられないことから、舗装の維持修繕については同じ道路分野にあって、なかなか脚光を浴びる機会がなかった。あるアンケート調査でも舗装の維持修繕計画を策定しているのは県レベルで8割、市町村においては2割程度にとどまっている。国交省が昨年10月に地方公共団体等の技術支援の一環として策定した舗装点検要領を機に、道路管理者が舗装の維持修繕の重要性を認識する機会になることを期待したい。