【円滑な公共建築事業】 基本設計段階で見積根拠の確認を
2017/06/12建設時事
建設メール
国土交通省は地方自治体が行う建築事業の円滑な実施に向けた手引きの骨子案を、12日に開いた有識者懇談会で示した。公共建築事業を取り巻く環境や特徴を踏まえた上で、企画、基本設計、実施設計、積算、施工の5つの段階における課題と求められる対応を提示している。特に基本設計段階では、通常要求される精度を超えて概算工事費の算出を行う場合は適切な設計報酬を確保すること、設計者が着手時に発注条件や企画段階の工事費などの見積根拠を十分に確認し、条件等が不明確な部分については確実に発注部局に明示を求めることが重要と指摘した。
公共建築事業の場合、発注部局と事業部局が異なる場合が多く、直接工事費に占める見積単価に基づく金額の割合が大きいなど土木事業とは異なる特徴があり、円滑に事業を進めるためには適正な事業費、事業期間、品質を確保することが最も重要となっている。
現状の課題として実施設計段階では、設計内容が発注条件とかけ離れ、予算規模との不整合が生じる場合や、一部では数量算出や施工に必要な詳細図面が整っていない状態で積算や工事発注が行われているとの指摘もある。そのため発注部局と設計者の両者が設計の進捗に合わせて、きめ細かく工事費を確認することが重要で、基本設計以降の状況変化により、やむを得ず求める機能等に変更が生じる場合はあらためて発注条件を整理し提示する必要があるとした。
積算段階では、積算に必要な期間が十分に確保されていないことに加え、一部では設計図面確定前に数量積算に着手した結果、数量が確定した設計図面と整合していない例や、工事費を予算に収めるために実勢価格を無視した厳しい見積単価設定になっているとの指摘がある。骨子案では求められる対応として、予算規模とかけ離れた設計内容に基づく工事費を予算に収めるための単価設定は避けるべきと強調した。
施工段階では、積算数量に疑義が生じた場合、数量は参考資料であることが多く、発注部局によって契約後の対応にばらつきがあるため、入札時積算数量書活用方式が有効であることを盛り込む。
7月にも開く次回会合で具体的な事例も加えた手引き案をまとめる。