【技術者制度検討会+記者の眼】 有能な技術者配置で地位向上を
2017/06/26記者の目/論説
建設メール
優秀な技術者の確保・育成と適正な施工確保の在り方を約3年間にわたり議論してきた国土交通省の技術者制度検討会の提言案がまとまった。今後は若手技術者の現場登用機会の創出から施工管理技士等の公的資格保有者の配置推進、有能な技術者の評価・配置推奨まで、継続的な技術研さんを通じて、現場経験年数と技術力を上げながら処遇を改善し、技術者の地位向上を図ることが必要としている。
高い能力を有する技術者の育成では、適正な施工を確保する上で監理技術者、主任技術者はできる限り公的資格保有者の配置を推進することが望ましいとし、「電気通信工事」の技術検定の創設や主任技術者要件として民間資格の認定を推奨する。また今後は国家資格など公的資格保有者であることの積極的な公開、公的資格保有者を非保有者よりも高く評価する取り組みを進めることも検討すべきとした。
さらに、難易度の高い工事や重要な工事には積極的に技術研さんを積んでいる有能な技術者を配置することや、個々の技術者の実績などを「見える化」する仕組みを作り、有能な技術者がいる企業が評価・選定される環境整備の検討を求めている。
適正な施工の徹底に向けては、技術者資格の確認制度の対象を拡充するため、専任の監理技術者に対して導入されている確認制度の対象を主任技術者に拡大することが効果的とした。他にも技術者配置等に関して法令で義務化された事項のチェックシステムの厳格な運用と内容の充実、悪質な不正行為に対する経営者と技術者の責任分担を踏まえた罰則の検討、技術者を配置しないメーカーや商社を請負契約から除外する建設企業以外の者の役割明確化などの推進を求めている。
技術者制度の基本的枠組み再構築のための監理技術者の配置要件や技術者の専任要件見直しは、今後の検討課題とした。
23日の最終会合で小澤一雅座長(東大大学院工学系研究科教授)は「今後の技術者制度の在り方では、まだまだ議論が必要な部分も残った。後世の人から良い制度を作ってもらったと言ってもらえるように継続して検討してほしい」と述べた。
〈記者の眼〉
今回、技術者資格確認制度の対象拡大を提言している背景には、実務経験だけで主任技術者になれる資格を満たしている人が全国に何人いるのかということさえ全く把握できていない現状がある。実務経験要件で主任技術者になっている場合、発注者に対して経験内容などが正しいことを現場ごとに証明する必要があるが、実際の実務経験を確認することは難しく、自己申告を信頼するしかないという声が多い。今後、提言に基づき実務経験の内容について統一的な視点で確認することが可能になれば、効率が上がり、一定水準の技術力を持つ技術者が各地域にどの程度存在しているのかも明確になる。施工管理技士等の国家資格だけでなく、主任技術者の資格要件となっている民間資格の煩雑な確認作業も含めて、まずは経験の証明と確認作業の大幅な簡素化が求められる。