【地方自治体の建築事業+記者の眼】 手引き参考に円滑な実施を
2017/08/01記者の目/論説
建設メール
国土交通省は「地方公共団体における建築事業の円滑な実施に向けた手引き」を作成し、全国の自治体へ通知した。また、建設業関係106団体および調査・設計等を行う発注関連業務6団体に対しても周知を図っている。同手引きは、予算措置から工事発注までが2年程度で、数十年に1回の大規模な建築事業を想定し、企画立案段階や設計段階におけるコスト管理、工事の適正な予定価格の設定に伴う留意点などをまとめたもの。
特に規模が小さい自治体の場合はノウハウが蓄積されていないこともあって、一部で設計内容が予算に収まっていることが確認されないまま事業が進み、工事の入札契約段階になって事業の停滞や手戻りが生じてしまう例が見られる。そのため同手引きでは、事業の企画、基本設計、実施設計、積算、施工の各段階で指摘されている課題と求められる対応について、具体的な事例も紹介しながら丁寧に解説している。
手引きでは、事業の初期段階における予算や事業費の適正な算定のための外部支援の活用例や、設計段階での発注者体制の補完方策なども盛り込まれた。建設業課入札制度企画指導室では「実際に自治体が苦労した事例を盛り込んでいる点が特徴で、他の自治体が読んで参考になると思う。事業をより円滑に実施する上での一助になれば」として、活用を呼び掛けている。
〈記者の眼〉
手引きの策定は、建設産業政策会議による提言でも建設サービス全体の品質に直結する設計の品質を高める方策の一つとして盛り込まれていた。そのため先月25日の中央建設業審議会総会で了承された経営事項審査や建設工事標準請負契約約款の改正に続く、施策具体化の第二弾といえる。役場庁舎をはじめとする市町村の大規模建築事業では、資材価格の高騰等により単価が上昇し、ほとんどの場合、基本計画時と比べて事業費が増加してしまう。手引きでは設計内容の見直しや外部支援の活用などにより、いかにして事業完了に至ったのかが分かるようになっている。今後、自治体が手引きを有効活用することで、工事発注段階で適正な予定価格が設定され、受注者にしわ寄せが行かない円滑な入札契約の実施が期待される。