《連載⑤》 【地域建設業は想定外の災害にどう備えるか】「ICTを農業に活用」
2017/08/17特集企画/PR
建設メール
和仁建設(岐阜県)の和仁松男会長は、同社の農業部門の子会社「和仁農園」の代表を務める。「高齢化と獣害に苦しむ中山間地の農地を守らなければ田舎は消滅する」との思いで、奥飛騨の保全に向けた農林業の再生に取り組んでいる。
和仁農園は従業員10人の農業生産法人。前年度の水稲作付面積は主食用米18ha、飼料用米11ha。このほか6haの水稲の耕作を受託している。
農村を守るには「原則として全ての農地を耕作するとともに、農地周辺の森林も手入れしなければならない」。その考えの下、耕作放棄された条件の悪い水田も、草刈り程度ではなく、飼料用米の作付けにより、しっかり耕作している。農地周辺の森林も、間伐や除伐を実施。これらの取り組みで獣のすみかがなくなり、結果的に優良農地の保全につながるという。
ただ森林整備は、環境税に基づく里山林整備を2013年から3年間進めたものの、赤字が続いたことから現在は実施していない。和仁氏は森林整備を「〝自然のダム〟として流域全体を豪雨から守る重要な予防保全事業」とし、個人所有が多く、整備が進まない山林が多くある状況を問題視し、公共事業として対応すべきと話した。
一方、農地整備では、条件の良い水田に高価格で販売可能な〝美味しい米づくり〟を徹底して進める。併せて、ICT(情報通信技術)の利活用や省力化・低コスト化技術を導入し、「適正な給料の下、楽しい農業経営を目指す」。担い手の確保・育成につなげる考えだ。
具体的には▽稲作業務を管理するコンピューターソフト『らくかる管理人』の開発▽就農1年目から和仁農園と同じ米づくりが可能な『稲作業務管理マニュアル』の作成▽販売価格の設定・検証、無駄の抽出・削減、コスト削減要因の把握が可能な『稲作業務生産原価マニュアル』の作成▽病原菌に強く、端境期に作業可能な『鉄コーティング直播』の実践▽ラジコン除草ボート『草取まつお』の開発―を推進。このうち草取まつおは、ラジコンボートに取り付けたチェーンで、泥の表面に根を張った雑草だけを掘り出す。除草後に水が濁るため、水中の光合成ができずその後も雑草が生えにくい環境が続く。農薬の散布も可能だ。同製品の導入で、農薬散布時間が60%、除草時間が70%削減でき、収量も16%増加したという。17年度はさらに農水省の補助事業でGPSの位置情報を使った無人走行化する計画だ。
さまざまな取り組みにより中山間地域の地産地消の確立や、米の生産原価の大幅削減、そして適正給与の確保と年間雇用創出の可能性が見えてきたと語る和仁氏。今後について、「農地・森林の保全活動には建設業の技術が有効」と指摘し、農林業と建設業の連携強化を進める必要を訴えた。(地方建設専門紙の会)
(つづく)