《連載⑥》 【地域建設業は想定外の災害にどう備えるか】「産業のネットワーク化を重視」
2017/08/18特集企画/PR
建設メール
島根半島の北方、80㎞の日本海に浮かぶ隠岐諸島は、四つの大きな島と約180の小島で構成している。町村は隠岐の島町、海士町、西ノ島町、知夫村の3町1村で、人口は約2万人。このうち吉崎工務店(吉崎博章社長)のある隠岐の島町は、島後と呼ばれる円形で最も大きな島にある。人口は隠岐諸島で一番多い1万4000人だ。吉崎社長は、農林水産業などの複業を通じた隠岐島の活性化に向けた取り組みについて報告した。
離島の抱えるさまざまな問題を受けて「有人国境離島法」が本年4月に施行された。日本の領海を守るために29地域148島の有人国境離島地域を保全し、地域社会を維持するための法律だ。人の交流の活発化、地元産品や観光の活発化などを通じて島内経済が拡大することを目指している。しかし吉崎氏によると、本土からの交通費や地元産品の本土への輸送費、民間事業の拡大など課題がある。
隠岐諸島の農林水産業については「隠岐が島根県の1次産業にかなり貢献している」と説明。人口比は島根県全体の3%だが、県全体の1次産業の就業者の割合が8%なのに対し、隠岐では13・4%。畜産関係も県の13%を占めている。繁殖牛の養頭数は県全体の21・6%。中でも漁業は生産額が県全体の46・5%を占めている。
建設業についても、隠岐での従業者の割合は高い。県全体で14%のところ隠岐では22%。建設業者の中で1次産業に従事しているのは畜産5社、稲作3社、しいたけ・野菜が1社。吉崎氏は「弊社の食品事業の前年売り上げは5500万円だがそのうち県内や地元での売り上げは1割強。大半は東京、大阪などの都市部に出荷している」という。
「地方はどこも人手不足が深刻だが、会社を持続させていくためには人材の確保が重要」と吉崎氏は強調する。転入者の定住促進の取り組みの一例として、隠岐諸島の西ノ島町の巻き網漁船団について紹介した。人口3000人の西ノ島町には巻き網漁船団が3船団あり、乗組員は90人。その7割がIターンで、地元小学校の半数の生徒がその子供だという。「そういう人たちを今後も大事な戦力として、継続して受け入れるよう工夫していかないといけない」と強調した。
吉崎氏が重視するのは産業のネットワーク化だ。「隠岐は1次産業従事者が県平均より多く、われわれ建設業の就業者数も多い。そこで、建設業が1次産業とネットワーク化するとともに、1次産業以外の業種や行政も加えて協力体制を築きたい」。その一例が、吉崎氏が代表を務める直売所だ。110人以上の農家・漁師・加工業者が関わっている。「前年の売り上げが9700万円、今年は1億1000万円くらいを目指している」という。(地方建設専門紙の会)
(つづく)