〈建設論説〉 若手だけが担い手ではない
2018/02/28記者の目/論説
建設メール
建設業界では将来の担い手として若手技術者や技能者の確保・育成が急務となっている。若手と聞くと入社年数の浅い新人が真っ先に思い浮かぶ。もう少し範囲を広げても、せいぜい29歳以下までが一般的ではないか。ところが建設業界では、どこまでを若手と呼べばいいのか正直なところ分からない。
国土交通省や都道府県では総合評価落札方式で若手技術者の育成を評価項目に加えることや、若手技術者を表彰する取り組みが進むが、対象となる年齢は各発注者によってまちまち。よく言えば独自性だが、実際は基準が無いということだろう。
少子高齢化により、どの業界も若年層の確保・育成は最重要課題で、他産業との競争が激しさを増している。だが将来の担い手は若手だけではない。単純に年齢で区分せず、中途採用した未経験者も建設業界の有力な担い手と考え、一定の評価と処遇を与える仕組みを考える時期に来ている。
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国交省が直轄業務で試行する若手技術者の配置を促す入札契約方式では、各地方整備局で若手技術者の設定が異なる。例えば経験と実績を積ませるために一定年齢以下であることを参加要件とするタイプでは担当技術者は30歳以下または35歳未満と差がある。管理技術者に代えて管理補助技術者を評価するタイプでは、配置する若手の管理技術者は40歳以下の場合と45歳以下の場合がある。
45歳以下を若手と呼ぶことに違和感を覚える人も多いと思うが、高齢化が進む現状が端的に表れているとも言える。業種によっては50代でも若手としてくくられる場合があり、年齢で若手を判断するのは無理がある。
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新規学卒者を中心とする若者の獲得活動は当然重要だ。一方で30歳を過ぎていても他産業から安心して建設業界に転職できるような中途採用の枠組みを充実させることも考えなければならない。かつて業界から去った技術者や技能者が即戦力として戻れるように門戸を広げる必要もあるだろう。
近年の技術の進歩や研修制度の充実ぶりは目を見張るばかりだ。地方にいながらでもICTを活用した研修を好きな時間に受講できる環境も整いつつある。工事や業務の品質確保に当たって経験はもちろん大事だが、以前に比べて経験不足を補う機会は格段に増えている。若手であろうとなかろうと、建設業に入って資格を取得し、実績を積み重ねれば、きちんと評価され、それなりの処遇が得られるという道筋を示すため、発注者を含めた関係者は知恵を絞り、早急に手を打つべきだ。