「震災から5年」地域建設業の復興・創生を
2016/03/11コラム
建設メール
「これからの5年間は被災者の方々が復興を実感し、復興・創生期間の名にふさわしい被災地の未来をつくる5年間でなければならない」
東日本大震災の発生から5年目に当たる11日、国土交通省の震災復興対策本部会合で石井啓一大臣は「実感できる復興」へ総力を挙げ、一段と復興を加速させることを幹部へ指示した。
会合では各地の現場の状況をきめ細かく注視し、必要な対策を機動的に講じてく方針が示された。被災地域の建設業者は自らも被災者でありながら、復旧・復興に尽力してきた。4月以降の復興・創生期間で描かれる被災地の未来とは、被災地で働く人々にとって明るい未来でなければならない。
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群馬県建設業協会の青柳剛会長は今月3日、自民党の二階俊博総務会長に対し「地方の建設業者が国民から期待される除雪や自然災害に迅速に対応するには本業である建設業の経営を立て直し、人員や機械を維持することが不可欠」と訴える要望書を提出し、理解を求めた。会員企業の受注が前年度比で軒並み減少していることに大きな危機感を持っている。
公共工事の受注を主とする業者は、年度予算の増減に応じて売上が大きく変動する。国の来年度当初予算で公共事業費は増額となったが、事業費が大幅に減少した地方自治体も多く、今後の競争激化が危惧される。東日本大震災以降、地域に根ざす建設業者の重要性は広く認識されたが、災害対応や地域の雇用を担う地域密着型の建設業者が今後も存在していけるのか、来年度の予算を見る限り不安は尽きない。
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地域の建設業は大手ゼネコンと競争するのではなく、違う土俵で共生するべきだとして宮城県建設業協会の佐藤博俊会長は「地域の町医者」という言葉を以前から使っている。大学病院や基幹病院で診るべき患者と、町の診療所などが診るべき患者をしっかりと分ける必要があるという意味で、今では全国各地で使われるようになった。
地域に精通している業者が存在することで地震や水害発生時には素早い初動対応を行え、早期の復旧が可能となる。また、日ごろから異常を発見することで重大な事態を未然に回避することにもつながる。
地域の実情に応じた、すみ分け方法の検討が今後はより一層求められるだろう。
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ただ、患者がいなければ病院も診療所も機能しない。また、患者がいても病院や診療所が無ければ誰も病気を診てもらえなくなる。医者だけではない。看護師や薬剤師、医療用品の納入業者など誰が欠けても満足な医療は提供できない。
この5年間で被災地ではインフラを中心に復旧・復興が着実に進んだが、復興が進めば仕事が無くなることを心配する業者は多い。次の5年間で描かれる被災地の未来は、全国の地方圏における将来の姿でもある。被災地と同様に、これからの5年間は地方圏でも建設業の復興・創生につながる期間としなければならない。