《連載④》 【地域のインフラメンテナンス】「第4次産業革命は地方で先行」
2018/08/10特集企画/PR
建設メール
第1部の「ICT技術がメンテナンスを変える」では、砂子組(北海道)が「北の大地でICT施工」、三信建材工業(愛知県)が「構造物点検のイノベーション!非GPS環境でのドローンによる新しい点検の提案」をテーマに事例発表した。これに対して、アドバイザーを務めた元国土交通事務次官の谷口博昭氏と元農林水産省農林振興局長の中條康朗氏がコメントを寄せ、地域特性に応じた技術の活用を通じて、地方創生につなげていくことの重要性を強調した。
谷口氏は、IoTやドローン、AIなどの活用による第4次産業革命について「これまでにないスケール感とテンポで人間生活や社会活動に大きな変化をもたらす。建設業界もこうした潮流を避けて通ることはできず、スマートに適切に対応することが必要」と指摘。その一方で「先駆的な事例をそのまま応用するのではなく、地域、現場に応じて展開することが望まれる」と述べた。
i-Constructionをめぐっては「あくまで手段であり、目的を間違えないようにしなくてはならない」とし、①生産性向上の果実を企業の利益と働き手の所得向上につなげる②現場のニーズ、現場の声を反映させられるよう、現場力、地域力、現場の応用力を高める③官と民が信頼関係の下で連携しながら建設産業の持続的な発展に努めていく―ことを留意点として挙げた。農林水産や社会福祉など他分野との連携により、「地方創生を実りあるものとしていくことが必要」とも話した。
中條氏は、北海道で1000haから3000haという大規模な国営ほ場整備が始まっていることを紹介した上で、「極めて大きな面積を1枚の田んぼとして整備する場合、誤差3㎝以内という均平精度を確保することが難しい。しかし、今回の事例のようにICTを活用すれば、ベテランでないオペレーターでもこれをクリアでき、これまでと違う形で現場力を高められる」と砂子組の取り組みを高く評価した。
また、農道整備が地域活性化にもたらす効果の大きさに言及しつつ「地方公共団体では、厳しい財政事情により農道の点検・更新に消極的になりがち。三信建材工業が発表したような技術を使い、どこを優先的に点検・更新すべきかを把握できれば、効率的なメンテナンスが可能となる。特に中山間地では少ない経費での正確な診断・点検が焦眉の急となっている。地方公共団体が一層受け入れやすいよう技術開発を続けてほしい」と期待を寄せた。そして、「第4次産業革命は確実に起こっている。東京よりも地方の方が目の前の問題解決のために動きが先行している。自信を持って取り組んでほしい」と締めくくった。(地方建設専門紙の会)