《連載⑥》 【地域のインフラメンテナンス】「簡単、低コストの手法開発」
2018/08/21特集企画/PR
建設メール
福島県宮下地区建設業協同組合の滝沢康成理事は「ビッグデータを活用したスピーディーな路面現状把握システム」と題して、効果的で効率的な道路維持管理を目指して、組合が地元のスタートアップ企業と共同で開発に取り組む路面劣化診断手法を紹介。「簡単、迅速、低コストの道路維持管理が可能になる」とシステムの商品化と全国展開に意欲を示した。
人口減少を背景に自治体の財政状況は、今後ますます厳しくなることが予想される。滝沢氏は道路維持管理の課題として①熟練者・専門家の高齢化に伴う技術・ノウハウの喪失②日々のパトロール等で得た道路情報の未活用③「後追い型」の道路補修―を挙げ、「リソース(財源)には限りがある。新たに負担を強いるような取り組みは実現困難だろう」と話した。
これらの課題を解決するため、組合は福島県大沼郡三島町に本社を置くtoor社と共同で、路面現状把握システムの開発に着手。福島県宮下土木事務所が行う日常的な道路パトロールに着目し、現業務の延長線上での実施が可能で、若手からベテランまで誰でも取り組むことができ、さらに日々蓄積されるビッグデータを可視化し有効活用することを主眼にシステムの検討を進めた。
システムは、パトロールカーに設置したドライブレコーダーから得た道路走行時の路面振動データをGPSによる位置情報、時刻情報などとともに3G回線を通じてクラウドサーバーに伝送。データをビッグデータ解析ソフトで処理・分析し、劣化状況などを地図上の道路に示す。
汎用的で安価なドライブレコーダーを搭載するだけなので初期投資などの負担を少なく抑えることができる。日常的なパトロール業務に付随して情報が収集できるため追加業務は発生せず、通行規制を行うことなく路面変化などを網羅的に測定・把握することが可能だ。分析結果はネット端末でどこからでも見ることができる。橋梁や高速道路、鉄道などのインフラ劣化診断などへの応用も可能だという。
2015年度に行った実証試験の路面劣化診断結果を、ほぼ同時期に測定された「プロフィルメーターを用いた平たん性調査」「路面維持管理指数(MCI)」の標準指標と比較し、定量的相関が確認されている。滝沢氏は「十分に実用性があることが実証されている」とシステムの性能に自信を見せる。
組合では、システムを実際の現場で利用できるよう商品として開発を進めている。toor社のほか、上部団体の福島県建設業協同組合、大手SIerと連携した販売・サポート体制を検討しており、今秋にベータ版をリリースする予定。19年度初めの福島県内でのサービス開始、同年度内の全国展開を目指している。(地方建設専門紙の会)