【国土交通省就任インタビュー】 事務次官・森昌文氏「持続的・安定的な予算を」
2018/08/23インタビュー
建設メール
国土交通省の森昌文事務次官は、就任インタビューで公共事業費の安定的な確保の必要性に触れ「建設業界に対するエールも込めて、やはり中長期的に持続的・安定的な予算がしっかりと確保され、計画的な社会資本整備、維持管理を行っていけるようにしたい。業界の方々が中長期的な事業展開を見定めていく上でも、そういった予算の仕組みが大事だ」との考えを示した。今後の補正予算にも期待を寄せ「秋以降、災害復旧の補正、それと同等の安全安心な国民生活の確保に関わる費用もその中に計上して台風や地震等にも対応できるような施設整備・補強の事業も進めていければと思っている。秋から年末にかけての全体の予算の枠組みづくりと災害に関わる補正予算の議論をどのような形で進めていくのか期待をしているし、私たちとしても強く訴えていきたい」とした。
最近の災害を踏まえて森次官は「雨の降り方と被害の出方が従来にも増して激甚化している。まずはそれに対する危機管理を、国土交通省を挙げてやっていく。また事前の防災・減災、ソフト対策の観点からは危険な状態をどのように知らせるかというリスクコミュニケーションに注力していきたい」と話す。
建設業界に対しては「業界の方々が引き続き地域の守り手として頑張っていただけるように、どのような支援をすればいいのかを考えたい。最近は担い手不足と働き方の環境改善が特に言われているので、改善すべきところはどんどん前向きに進めていきたい」との姿勢を見せる。
建設業の生産性向上に関しては「新しい技術を導入する一方で、人で現場を動かしていることに対する取り組み、それは余裕ある工期や休日がしっかり取れるような労働環境づくりという両方を進める中で担い手不足を解消し生産性をアップさせていきたい。いかに優秀な担い手を確保し、夢と希望を与えられるような職場にしていくのかがポイントになる」と語る。
今後のインフラの維持管理に向けては「イタリアのジェノバで高速道路の高架橋が崩落した。原因はまだはっきりしないが、老朽化あるいは適切なメンテナンスをしなかったことが原因と言われている。これは特異な例ではなく先進国でもインフラの崩壊が実際問題として起こっている。日本でも笹子トンネルの天井板崩落を踏まえて定期的な点検を義務付けてから、ちょうど5年が経った。昨年度までの5年間で全国の橋梁、トンネルなどの点検は一通り終わったと認識している。実際にデータは集められたが課題も出てきた。現場では新設よりも修繕の方が難しい対応をしなければいけないことがあり、それを担う人が非常に少ない。また実施していくための費用が特に市町村では十分ではない。費用と担い手が大きな課題だということが国、県、市町村ではっきりしてきた。イタリアで大きな事故があったことを踏まえた時に、いかに効率的に、安価で、適正なライフサイクルコストでメンテナンスや修繕ができるかというのを、まさにこれから検討し、実行に移していくタイミングが今ということだと思う」との見解を示した。
【略歴】もり・まさふみ
1981年東大工学部卒、建設省採用。国交省道路局高速道路課長、同局企画課長、大臣官房技術審議官、近畿地方整備局長、道路局長、技監を歴任し7月31日付で現職。59年1月生まれ。59歳。奈良県出身。