〈建設論説〉 「下請けいじめ」を死語にせよ
2018/09/28記者の目/論説
建設メール
総務省が8月10日に経済産業省、国土交通省などに対し下請取引の適正化に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告を行った。法制度の周知・啓発や相談窓口の一層の周知、親事業者による報復の防止に向けた窓口の運営見直しなどを求める内容となっている。総務省の意識調査では下請け業者の多くが「下請けいじめは減ってきている」とした一方、建設業者の約25%は「減っていない」と回答するなど、依然として「下請けいじめ」が無くなっていない。
親事業者からの報復は経産省が所管する製造業が多いとされるが、建設業は関係ないとは言えず、実際に不当な下請取引を相談した結果、それ以降は仕事の依頼が来なくなったという例もある。
建設業で働き方改革を実現するためには、元請けと下請けが真に対等な立場で仕事ができるようにならなければいけない。
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国交省の地方整備局では建設業法違反通報窓口「駆け込みホットライン」を設けている。また請負契約に関するトラブルの相談窓口として建設業取引適正化センターもあり、無料で解決方法の相談に応じる。
だが、ある下請け業者がホットラインを利用したところ「仕事を干された」という。当然ながら相談者は分からないはずだが、誰が通報したのかといった情報が広まる実態があり、「下請け業者は怖くてなかなか通報できない」のが本音のようだ。
同ホットラインへの通報件数は年間平均1700件程度で推移しており、問題の根深さを物語る。建設業の場合は親事業者からの報復よりも不払いの問題が大きいが、行政は民事不介入の立場を取るため、「違法行為が野放しになっている」との指摘は多い。下請法と同様に、建設業法でも通報を理由とした不利益な取り扱いを禁止する規定を設けることも考えるべきだ。
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建設業取引の適正化に関する講習会は全国各地で開かれているが、現実問題として講習会の開催を知らなかったり、場所や時間の都合が付かずに参加できない業者は多い。11月の建設業取引適正化推進月間では周知方法の工夫、平日夜間や休日も含めた講習会の開催が検討される見通しで、積極的な参加を期待したい。
日本建設業連合会は9月18日に「労務費見積り尊重宣言」を行った。建設産業専門団体連合会による5月の総会決議に応える形で、建設技能者の処遇改善を後押しする姿勢を明確にした。時代は変わりつつある。
元請け・下請けが法制度を正しく理解し、法令順守を徹底しなければ、建設業の働き方改革は看板倒れになる。「下請けいじめ」という言葉を一刻も早く死語にしなければならない。