【行政セミナー】 先端技術活用で新時代の河川管理を
2018/10/26建設時事
建設メール
日本工業経済新聞社および全国地域活性化支援機構が主催する地方自治体向け行政セミナーが25日に都内の機械振興会館で開かれた。国土交通省、地方公共団体情報システム機構後援、インフラメンテナンス国民会議が協賛。当日は約120人の産官学の関係者が参加し、これからの河川防災・減災のあり方をテーマに、「Society5.0」時代の河川管理の課題と取り組みについて考えた。
第一部では、まず国土交通省水管理・国土保全局の塚原浩一局長が基調講演を行った。塚原局長は7月の豪雨災害について「経験したことがない大雨が降り、広範囲で被害が発生した。これからの厳しい時代を象徴するような現象」と指摘した。今後の新しい河川管理では「先端技術をより一層活用することによる管理の高度化、効率化が求められる。従来の熟練技術者の目による管理に加えて、ICTやIoT技術等を活用し、データを重視した河川管理を行う必要がある」と強調。3次元地形データの活用や簡易型河川監視カメラの開発、洪水時における施設管理の高度化などを進める考えを示した。また新技術の実装が重要であるとした上で「われわれが旗振り役となって皆さんの取り組みをリードしていきたい」と話した。
続いて東京大学大学院工学系研究科の池内幸司教授が「激甚化する水害への備えに何が必要か」と題した特別講演を行った。池内教授は、従来の観測記録を大きく上回る大雨が近年発生する中、今後は地球温暖化に伴う気候変動により水関連災害がますます激甚化し、施設の能力を超えるような災害が増加すると説明。「命と暮らしを守るために、住民が的確な避難を行えるようなシステムの整備、治水施設の着実な整備に加えて、既存施設をより一層有効に活用することが不可欠」と訴え、「ICT、IoT、AI、衛星画像、LP(レーザ・プロファイラ)、UAVなどを駆使した新たな河川管理・危機管理体制を構築していくことが重要」と話した。
またアジア航測の小川紀一朗社長は「ICT、IoT技術を活用した河川管理と防災・減災に向けた民間の取り組み」をテーマに講演し、同社の最新の測量技術による取り組みを紹介した。
第二部のパネルディスカッションでは、池内氏がコーディネーターを務め、気象キャスターの國本未華氏、三重県伊勢市の鈴木健一市長、国交省水管理・国土保全局河川計画課河川情報企画室の島本和仁室長、小川氏をパネリストに迎え、「新技術を活用した河川管理と防災・減災の取り組み」について意見を交わした。河川災害から人命を守るにはハードとソフト事業が一体となって取り組むことが不可欠とし、新技術や情報伝達も避難率を上げるという視点から考えていかなければならい、との方向性を示した。