〈冬虫夏草〉 東京大学入学式
2019/04/23コラム
冬虫夏草
このほど東京大学の入学式が執り行われ、新入生約3100人を前に祝辞を述べたのは、ジェンダー研究の第一人者で、同大名誉教授の上野千鶴子氏だった。
祝辞の中で上野氏は、「あなたたちはがんばれば報われると思ってここまで来たはずです。ですが、がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています」と述べた。
さらに、「がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください」と言った。
もとより同発言は女性差別をはじめとする差別問題を念頭に述べられたものである。
しかし、この言葉はあらゆる場面に当てはまる問題でもある。
企業に就職したのならば、個人の力量ですべてを乗り切れる特別なこともたまにはあるだろうが、一般的に仕事(事業)はチームで取り組まれる。個人の力が影響するのは、一過程にすぎない。
部長職など指導的立場においても、部下を育てるより個人の力量で仕事をこなしているとすれば、継続性が重要である企業としてはかえってマイナスとなる。
教授は専門職だから、その分野での指摘であろうが普遍的問題としても提起してもらえば良かった気がする。
ところで、世界大学ランキングでは東京大学は42位、アジアでみると中国の清華大学は22位、シンガポール国立大学は23位、北京大学は31位となっている。上位はアメリカ、イギリスが圧倒的で経済力からみると東大の順位は残念である。
2018年の東大生の就職先は第1位は世界的コンサルティング会社であるアクセンチュア、第2位はトヨタ自動車、第3位は野村総合研究所で、10位以内に官公庁が入っていない。
規制が多い日本において指導的立場の官公庁に優秀な人材が集まらないのは決して良い傾向ではない気がする。
寄稿者:冬虫夏草
長きに渡り、地方自治体における総合評価制度の実際の現場で評価に携わってきた。現在も総合評価を探究し、ゼネコンはじめ多くの建設企業から相談を受けている