【業者の悩み+記者の眼】 適切な設計変更の相談増える/相談契機に改善した例も
2016/05/12記者の目/論説
建設メール
国土交通省が地方整備局などに開設している「建設業フォローアップ相談ダイヤル」の相談実績がまとまり、1月から3月までの受付件数は53件で、大半が建設業者からだった。建設業法全般の相談以外では、適切な設計変更や社会保険未加入対策に関する相談が目立つ。地方自治体や独立行政法人が設計変更に応じない事例の相談もあり、国交省は相談者からの意向を踏まえて発注者に情報提供を行った。
設計変更については元請建設業者から「落札時に図面で提示があった場所とは異なる場所の工事を指示され、設計変更は行う旨を口頭で伝えられたため施工をしたが、後になって設計変更を認めてくれない」「監督員から『後で変更の手続きを行うから工事を進めてくれ』と言われて工事を進めていたが、その後、変更契約の手続きをお願いし、監督員に伝えたが、いっこうに手続きをとってくれない」という相談が寄せられた。
国交省では発注者が書面による契約変更を行わなかった場合は建設業法第19条第2項に違反するほか、発注者が請負代金の増額に応じることなく受注者に対し追加工事を施工させた場合は同法第19条第3項に違反する恐れがあることを伝え、品確法運用指針に従って適切な設計変更を求めることを要請した。また、受発注者双方に事実関係の確認も行っている。
さらに「工事請求書に日付を入れずに出してと指導された」という相談もあった。国交省では不適切な事例と判断し、発注者へ情報提供したところ、関係する全部局に指導があり、改善につながったという。
建設業課入札制度企画指導室では本年度も相談ダイヤルの設置を継続し、引き続き現場の生の声を聞く。関東からの相談が多いことから「地方部も含めて周知に努め、活用を促したい」としている。
なお、2015年度全体では149件の相談を受け付けており、うち16件について発注者へ情報提供を行っている。
〈記者の眼〉
国交省が「担い手3法」趣旨徹底の試金石としていた歩切りは実質的に根絶したことから、1月から3月の期間で相談件数はゼロ件だった。続く課題は設計変更への対応で、年度末だから相談件数が増えたことを差し引いても設計変更に関する相談件数は増加傾向にある。今回の事例は「言った、言わない」の問題があるため、どちらに非があるのかは判断できないが、いずれにせよ書面による契約変更が不可欠であることは間違いない。
相談ダイヤルでは相談者が了承すれば、個別工事件名を出して発注者に情報を伝えるという。発注者に相談した業者名が伝わることを承知の上で相談し、実際に改善につながった例もあるようだ。品確法運用指針の理念が浸透し、相談ダイヤルで現場の生の声を伝える場ができた現在、業者も泣き寝入りせずに正当な主張を行う必要があるだろう。