【高力ボルト不足対策】 発注様式統一で明確な注文徹底
2019/05/17建設時事
建設メール
鋼材などの接合に使われる高力ボルトが建設現場で不足し、納期が長期化するなど工事への影響が拡大している状況を受けて、国土交通省は需要安定化に向けた対策を取りまとめ、契約適正化の対応を建設業団体等へ要請した。17日付で▽全国建設業協会▽全国中小建設業協会▽建設産業専門団体連合会▽日本橋梁建設協会▽プレハブ建築協会▽日本建設業経営協会▽日本建設業連合会▽鉄骨建設業協会▽全国鐵構工業協会の9団体に対して、①ボルトメーカーの供給能力が実需に対して著しく下回っている状況ではないことの認識共有②重複発注など不確定要素の高い発注を抑制し、納期・納入先が明確な注文から優先的に供給できる環境を整備するため、発注様式を作成③同様式または、これに準じたものの活用の周知徹底―について協力を求める文書を出した。
同日の会見で石井啓一大臣は「ボルトの需要・供給・流通の各段階の事業者においては、不確定要素の高い発注を避け、必要な分を必要な時期に注文するというルールを徹底していただきたい」と話した。
国交省が昨年10月の調査に続き3月に実施した2回目のアンケート調査(451社回答)の結果、需給動向は引き続き全国的に逼迫(ひっぱく)傾向が継続し、納期は前回調査の6カ月程度から8カ月程度へと長期化していることが判明した。調査対象工事の約9割が工期に影響が及んでいると回答し、受注を取りやめる社も出ている。
ただし国交省では、建築着工統計等から推計した鉄骨需要量と供給能力を推定した結果、高力ボルト需要量は逼迫するほどの状況ではなく、需要側の自衛手段として受注が未確定の段階での先行発注、水増し発注、多方面への重複発注により実需以上にボルトメーカーに注文が殺到している「市場の混乱による一時的な現象」の可能性が高いと判断。鉄骨ファブリケーターが流通業者の商社や問屋、特約店と取引する際に曖昧な契約形態も存在することから、ボルトメーカーに対する「標準的な発注様式」を作成し、適時適確な注文を促すことにした。
発注元の明確化により取引情報の精度を担保するとともに、発注情報を工事名ごとに記載することで、使用する時期が明確になるため、供給側は実需に基づく生産が可能になる見通しだ。
なお工法の変化等に伴い高力ボルトの需要量自体が変化している可能性もあるため、国交省では今後、実需を把握する調査を行うことにしている。