【社会保険未加入対策+記者の眼】 立入検査で標準見積書の活用徹底へ
2016/05/23記者の目/論説
建設メール
国土交通省は社会保険未加入対策を強化するため、法定福利費を内訳明示した標準見積書について立入検査による活用徹底を図る。大臣許可業者に対して6月から地方整備局長名でアンケート調査を行い、標準仕様書に関して元請業者から下請業者への働きかけや、下請業者から提出された見積書の尊重状況などを確認し、必要に応じて立入検査を実施する。
公共工事・民間工事を問わず全ての下請企業と建設技能労働者に必要な法定福利費を行き渡らせ、特に低い加入率にとどまっている都市部や二次下請以下の企業で成果を上げることを目的に、重点的な立入調査を行うもの。
社会保険加入に関する下請指導ガイドラインで、元請企業は「協力会社の社会保険加入状況について定期に把握」し、「下請契約に先立って選定の候補となる建設企業について社会保険の加入状況を確認し、適用除外でないにもかかわらず未加入である場合には、早期に加入手続きを進めるよう指導すること」とされている。そこで元請業者が下請業者に対して、どこまで保険加入要請を実施しているのかを把握するため、協力会社の会合で要請する以外に「個別の契約書で標準見積書の提出を求めているか」「提出された見積書を尊重して下請負契約を締結しているか」を確認し、元請業者の対応が不十分であれば改善を求める。
土地・建設産業局建設業課では取り組みを通じて「法定福利費を確実に行き渡らせる流れを作り、社会保険加入の意識付けを行いたい」としている。
なお、国交省では6月以降に同ガイドラインを改定し、再下請負の場合でも元請・一次下請間と同様に標準見積書の提出を見積条件に明示すること、法定福利費を請負金額に適切に反映することを明確化する予定だ。
〈記者の眼〉
「元請業者が必要な法定福利費を支払ってくれない」という声は現在もあるが、一方で「経費の内訳が明確な見積書を作成できない下請業者がいる」のも事実。社会保険に加入するという当たり前のことを行うために「標準見積書は作成しなければならないもの」という認識を持つことが必要で、発注者・元請・下請業者が本気で取り組むべき時期に来ている。
国交省は標準見積書の扱いについて建設業法上の位置付けを明確化するため、下請指導ガイドラインを改定する。簡単に言えば下請業者に対して標準見積書の提出を求めず、尊重もしない場合は法律違反ということになり、今後は監督処分や行政指導を行う根拠が明確になる見通しだ。〝法律違反だから即処分〟ということにはならないと思われるが、誤った認識を改める上で一定の効果が期待される。