〈冬虫夏草〉 土木工事の基準
2019/09/09コラム
冬虫夏草
土木工事の基準とは何だろうと思うことがある。
コンクリート示方書によれば、マスコンクリート(一般的には、最少断面が壁、梁部材で80cm以上、マット状、柱状で100cm以上のものが目安だが、下端が拘束された壁では厚さ50cm以上のコンクリート)は設計の段階で温度解析を行う必要があるとしている。
それにより、誘発目地などを設計上で設置するためだ。
しかし、ほとんどの重要構造物がマスコンであるにも関わらず、設計時に温度解析を行っている発注者は寡聞にして聴かない。
そして、各工種にある施工指針である。
指針の安全率の設定は明らかに過剰であり、盛土施工の指針通りに余盛りなどを行えば、設計上の土量では到底足りなくなる。
より良い公共施設・基盤を目指しているのなら、示方書や指針に従った積算であるべきである。
地方公共団体が発注する工事において、補助事業であるならば積算マニュアルは同一であり、必要最低限である。
単独事業で大規模工事を行う発注者は東京都以外ではほぼない以上、単価だけではなく、積算マニュアルも見直すべきであろう。
本来、発注者は事業者として仕事を発注するだけでなく、業界の指導も責務の一翼である。その事業者が、最低限の様式で、高い品質を望むのは如何なものであろう。
さらに、発注者は積算がユニット積算などマニュアル化したことにより、現場の状況がますます判らなくなっている。
コンクリートの養生では、どこまでが標準なのか正確に判っている技術者は少なくなっており、明らかにユニット積算の弊害である。
細かなことを言えば、歩道に設置される街路樹などは幹の大きさで支えが違ってくるが、そんな細やかな積算をできる技術者が少なくなってきている。
そして、どの発注者も設計変更に対して寛容な方針を立てているが、実際の担当者が柔軟に対応しているかというと、はなはだ疑問である。
特に、議会承認案件となればなおさらである。
現在、世界は異常気象の中にある。エルニーニョが起こらなかった去年も世界中で異常気象現象が起こった。
観測史上初を耳にすることも慣れてきてしまった。
生命を守る社会基盤の整備も従来道理ではなく、より高く設定されるべきであろう。