ICT施工について県内で業者に聞き取りをしたところ、その性能自体に否定的な意見はゼロ。聞こえてくるのは「これはいい」「使える」といった前向きな声ばかりだ。ただ国の一部工事では導入が進むものの、県工事では、まだ実績が少ない。それゆえ業者も多額の投資に踏み切るべきかどうか、ようすを見ているようだ。ある土木業者は「ICTの案件が増えてくれば現在保有している重機の切り替えも考えるが、当面はリースで対応したい」と話す。

ICT施工により得られる結果は申し分ない。ただそれも着工までの準備が整えばの話。実際に一連のプロセスをICTで実施した業者に聞くと、工事に至るまでの手間が大きな負担だったという。ICT指定の工事にしても現状、発注者からは従来施工用の平面図しか出てこない。それを施工者自身が3D図面にして初めて工事ができる。つまり従来施工とは初めから全く別のプロセスを踏むことになる。工事の結果が後の受注に響く公共工事では特に、慣れない作業への不安はある。
直線的な現場であればいいが曲線を描く構造物など変化点が多い場合、変化点ごとに平面図を作り、そこから3D化。自社で完結できる環境があればいいが、ない場合は外部コンサルタント業者に委託することになり、そのやり取りだけでも、かなりの手間と時間を取られる。
すでに国の一部機関では確実にICT施工に向くと判断した現場については、設計当初から3D図面を作成するケースも出てきた。県内のコンサル業者からは「発注者が3D図面を作る(委託)ようになればICTの普及は進む」と発注者のリードを求める声も上がっている。
県については数年前から施工者の希望を聞きながら、比較的取り入れやすい締め固めなどにICTを導入した。業者からは「ロス無く作業が進む」「作業効率が大幅に上がる」「また使いたい」との感想が出るなど評判は良い。だがレーザースキャナーや制御機能付きの建機を使い、測量・設計から維持管理まで、土木工事の一連の流れ全てをICTで進めたのは、これまで1件だけだ。
県も国の指導のもとICTの導入を推奨するが、まだ手探りの状況は否めない。ある土木業者は「県はまだICTを取り入れたばかり。当社もまだそうした案件に当たっていない。ICTが良いものであることは知っているが」と、県工事への導入状況を見ながら今後の対応を考えるという。
購入すればレーザースキャナーは1000万円程度、ICTバックホウは3000万円程度するもの。多額の投資に踏み切るには、国や県が先導し、今後の公共工事で確実に償還できるであろう見通しを示すことも重要になる。