【さいたま発】 新型コロナの脅威 -対峙する建設業-
2020/03/06記者の目/論説
新型コロナウイルスの国内感染者数が1000人を超えた。収束の糸口がいまだ見えない中、建設業界にも影響が及び始めている。熊本県と千葉県では建設現場の従事者が感染。国土交通省は対応を急ぐ。加えて、中華人民共和国で生産する建設資材の調達遅延、病床確保といった課題も浮かび上がってきた。建設業界は何ができるのか。関係者への取材を通じ、現状と将来の可能性を探った。
■熊本、千葉で感染者
国交省は2月、熊本県と千葉県の建設現場で感染を確認。受注者の意向を確認した上で工事などの一時中止や工期適正化を求める通知を、各都道府県や各政令指定都市などに出した。各自治体では通知に加えて、国が定めた「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」に則って策を講じている。
■輸入建材に影響が
日本建築材料協会の担当者は「一部のメーカーによると、製品の製造に影響が及んでいると聞いた。国内生産へ徐々に切り替えて対応しているようだ」と明 かす。証言を裏付けるようにトイレ製品を扱うTOTOは2月18日、協力会社からの部品供給に遅延が生じていることを公表。ウォシュレットなどの生産に遅れなどの影響が出てくる可能性を示した。
■3D印刷機で施設を
新型コロナウイルスの発生地とされる中国湖北省武漢では、不足する隔離施設増設に向け、1台につき1日15棟が設置できる3Dプリンター(3DP)を導入した。日本では中国のような施設整備は可能なのだろうか。
国内で3DP事業を先駆ける會澤高圧コンクリート㈱(本社=北海道苫小牧市)の會澤祥弘社長は「技術的・強度的には可能だ」と説明。しかし「建築基準法の指定建築材料制度が課題。3DPの材料をどう分類するか、議論が必要だろう」と話した。會澤祥弘社長は「3DPが普及すれば、デザインの幅が広がり、建設業界の可能性が広がる」と強調する。今こそ現代技術に則した法整備を議論すべきではないだろうか。
■大規模病床の確保には
感染者が増加した場合に、病床確保は焦眉(ルビ・しょうび)の課題となる。武漢では、813床の新型肺炎専門病院「火神山医院(ルビ・かしんさんいいん)」、1300床を有する雷神山医院(ルビ・らいしんさんいいん)を開院した。いずれも建設の意思決定から、わずか10日間で完成しており、驚異の建設速度と言える。
日本の病院早期建設について、建築エコノミストの森山高至氏は「許認可の問題があり、相応の時間を要する」と指摘。森山氏は「大規模病床が必要となる場合、大型食品工場を病院に転用する方法が現実的では」と提案する。「数が多く、立地が高速に近い。衛生面も管理しやすい」と話した。
■建設は人を守る
建設業界にとって新型コロナウイルス感染の影響は大きい。見えない敵と対峙(ルビ・たいじ)した時、建設業界に何ができるのだろうか。例えば、感染拡大を防ぐような病院施設の確保などが挙がるかもしれない。早期の病院整備には柔軟な法律や人材、建材、技術などが必要となる。まさに政府・行政・企業・地域全体が一体となって進めなければならない。建設は災害からウイルスから人とまちを守る。
※3Dプリンターで建築を(写真提供:會澤高圧コンクリート)