
国土交通省が日本建設業連合会(日建連)、全国建設業協会(全建)、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会、全国建設産業団体連合会の建設業5団体などと共同で検討を進めてきた「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」が1月にまとまり、赤羽一嘉大臣へ提出された。新計画では従来の計画で打ち出した「女性活躍」から「女性定着」に軸足を移し、就労継続の実現に重点を置くことにした。具体的には、女性の入職者数に対する離職率の割合を2024年までの間、前年度比で減少させるといった目標を定め、官民挙げて取り組む見通しだ。新計画を実行する上で、今後は建設産業で働く全ての女性の「働きがい」と「働きやすさ」の両立が不可欠であり、そのための環境整備が求められる。
14年に作成した前計画「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」に基づき、建設業界では、自主計画の策定や快適トイレの推進等を通じて女性が活躍できる取り組みを進めてきた。
建設業団体の取り組みのうち、日建連は建設業で働く全ての女性に対し「けんせつ小町」の愛称を用いて活躍を推進。毎年、優良な取り組み事例を表彰・紹介するとともに、将来の担い手確保に向けて女子小中学生を対象に夏場には全国の工事現場で現場見学会を開いている。全建は、地域建設業における女性の定着促進に向けた新たなロードマップを3月に作成。「全都道府県協会において女性部会の設立と建設産業女性定着支援ネットワークへの加入を目指す」などの目標を掲げ、さらなる支援策を実施する考えを示した。
官民一体となった取り組みの結果、5年間で女性技術者数・技能者数はともに増加し、施工管理技術検定試験では各種目で女性の受験者数、合格者数が増えている。また建設産業女性定着支援ネットワークの活動が全国で広まるなど一定の成果が出てきた。ただし新計画策定に先立ち、全国で意見聴取会を開いたところ、全10ブロックで意識改革の必要性が指摘された。世代や役職を問わず、建設産業で女性が働くことへの理解がまだ深まっていないことが浮き彫りになった。
現場環境改善の象徴となる女性専用トイレや更衣室の設置は一部の現場にとどまり、産休・育休制度は企業間で対応が異なることを、女性の定着に向けた課題として指摘する声も多い。
新計画が実行段階を迎えるに当たり、国交省では20年を「建設産業女性定着元年」と呼べるような年にするため、全国で官民挙げた取り組みを進める姿勢を見せている。建設業界でも働き方改革が待ったなしで進む中、入職後の女性の孤立を防ぎ、柔軟な働き方の推進により女性の「働きがい」と「働きやすさ」の両立を早急に実現させなければならない。