長野県の建設産業における女性参画の旗振り役を担う県建設業協会女性部会。2015年の発足以降、さまざまな取り組みを活発に展開している。

人々の生活を支える建設、その建設を多くの女性が支えています―。同部会のウェブサイトには建設業で働く女性のインタビューが掲載されている。土木技術者や一級建築士、経理担当、技術系公務員など。連載は30回を超える。業務内容や入職のきっかけ、仕事での喜びはそれぞれだが、一様に充実感が伝わってくる。入職促進としての有効性はもちろん、業界のイメージアップにも一役買っている。
このほか19年度1年間の主な活動だけ見ても、8月に山梨県建設業協会の女性組織「けんせつ小町甲斐」との意見交換、9月に建設業への女性の入職促進を目的とした建設現場見学会、10月には長野工業高等専門学校女子生徒との意見交換等々。県建設業協会と県建設部が建設産業の魅力を多くの人に知ってもらおうと企画した11月の「土木の日PRイベント」では、揃いのユニフォームに身を包み青年部会と共に来場者をもてなした。
そして女性部会が今、普及を目指しているのが「建設ディレクター」という新しい働き方だ。昨年11月に開いたセミナーでは、提唱者である建設業向けコンサルティング企業・京都サンダー(京都市)を講師に招き知識を深めた。
建設ディレクターはITスキルとコミュニケーションスキルにより、オフィスから現場を支援する取り組み。従来の役割分担や職域を超えた「新たな職域」と位置付けている。例えば、建設工事に伴う膨大な書類は、その多くを現場担当者が作成しているが、内勤の女性事務員が「建設ディレクター」として業務の一端を担う。これにより女性事務員はスキルアップを図ることができ、現場は長時間労働の軽減、品質のさらなる向上や若手育成に時間を振り向けることも可能になる。
倉科里絵部会長は「女性が働き続けられる環境の整備には国の施策も必要だが、われわれ女性自身が建設業で働き続けるためのモチベーションを保たなければならない。それには仕事が面白い、楽しいと感じること。建設業の醍醐味はやはり現場だと思う。会社で内勤する方も建設ディレクターを通じて現場の面白さ知る機会になれば」と話した。
今年1月に開かれた県建設部との意見交換会では議題の一つに挙げて支援を要望。同部も働き方改革につながる取り組みに興味を示し、協力を約束しており、官民一体となった、さらなる施策の充実が期待される。