【工事品質確保+記者の眼】 監督・検査充実へ抜き打ち確認も
2016/09/26記者の目/論説
建設メール
国土交通省は26日開催の発注者責任に関する有識者懇談会で、近年相次ぐ施工不良や不正事案の再発防止へ、より確実に工事品質を確保するための監督・検査内容の充実に向けた検討の方向性を示した。発注者、受注者ともに人員が限られる中にあって、新技術の導入や抜き打ち確認の実施など、合理的で不正の抑制に効果的な監督・検査内容、方法と、品質確認体制のあり方を検討する。
具体的には、まず施工状況の確認作業を効率化するICT(IoT)技術の導入を検討する。場所打ち杭の場合、ビデオ撮影による施工状況の記録と保存、自動計測管理や施工データのクラウド管理などを想定している。
確認項目や頻度の増加と同等の効果が期待できる抜き打ち確認にも取り組む。現在の監督・検査方法は受注者が不正を行わずに施工するという性善説が前提となっているが、今後は受注者へ事前通告せずに抜き打ちで施工状況の確認を行う。当面は落橋防止装置の溶接状況、地盤改良工事の薬液注入について実施し、基礎杭の支持層到達状況など他の工種への拡大も検討する。
また、不可視部分の確認が可能な非破壊試験を完成検査時に活用してコンクリート構造物の配筋状態を確認し、段階確認の頻度を減らすことも検討していく。
さらに品質確認体制のあり方も見直す。確認頻度の充実を図るため、発注者による臨場確認の増加や施工者と契約した第三者による確認、ISO9001に基づく品質マネジメントを活用した確認などを想定している。
委員からは「(市町村は)従来のやり方を続けることも大変で、さらに充実させることは難しいのではないか」「実行可能で、確実に確認できることを担保する体制の検討がさらに必要」などの指摘が出た。
〈記者の眼〉
受注者へ事前通告せず、抜き打ちで行う施工状況確認は不正行為を抑制する上では効果があるだろう。実際に不正が発生し、性善説が否定された以上、目に見えない部分の品質を確保するためには、より緊張感を持った監督・検査が求められるのは仕方がないところ。ただ従来のように日時を決めて実施する場合と異なり、提出を求める資料が出てこなかったり、確認できる状況ではないなど、結果的に無駄が生じる可能性もある。効果的な抜き打ち確認のタイミングが当面の課題と言えそうだ。