〈壁耳〉 2級学科試験の年2回実施は可能か
2016/10/25記者の目/論説
建設メール
記者 国土交通省の技術者制度検討会で2級学科試験を年2回実施する方向性が出されましたが、なぜですか。
デスク 言うまでもなく担い手確保対策だよ。建設業は若年層の入職者数が大幅に減る一方、入職後の離職率は他産業より高い。特に土木は技術検定の受験者数が減少傾向にあり、受験者・合格者の平均年齢は上昇している。若者の受験機会拡大や受験要件の緩和により早期の資格取得を促すことで、建設業界へ就職する動機付けを強化したいという考えが背景にある。
記者 2級学科試験は、これまでも早期の受験や会場を拡大する取り組みを進めてきましたが、効果は出ているのでしょうか。
デスク 本年度から17歳も受験可能とした結果、土木・建築ともに前年度比で高校生の申込者が増加している。2級試験の学科のみ試験の合格者は、その後の2級実地試験や1級学科試験に早期受験する傾向があり、合格率も通常の受験者に比べて高い。ただ高校在学中に受験し、不合格になった受験者の場合、卒業後翌年の再受験者が大幅に減る傾向がみられる。また、学科試験合格者は連続2回の実地試験を学科試験免除で受けることができるが、2回連続で不合格だった場合、再度学科試験から受験する比率は大幅に減少するため、課題となっている。
記者 受験機会を増やすと同時に受験要件の緩和も必要ということですね。
デスク 工業高校からは「受験のチャンスを増やしてほしい」「受験日を早く(遅く)してほしい」といった要望が出ている。国交省では、まず2017年度の土木と建築の2級学科試験から年2回化を実施しようとしているが、実施対象とする試験種目や導入時期は今後の検討課題だ。
記者 スムーズに導入できるのでしょうか。
デスク そんなに簡単な話ではないよ。試験が年2回になれば問題も年2回作らなければならない。試験会場の確保や人件費の増加も大きな問題。「受験料を引き下げてほしい。願書を安くしてほしい」という要望もある。試験機関の負担は相当増えるし、受験する高校側だって通常の勉強に加えて試験対策を行うわけだから、先生も生徒も大変だと思うよ。
記者 難しい問題ですね。
デスク せっかく取った資格は活用できなければ意味がない。就職に有利であることは確かだが、高校卒業後3年も経たずに半分の人が業界を去ってしまう現状を変える必要がある。入職後のキャリアアップにつながる仕組みを業界全体でもっと考えていくことが重要だろう。