現場が抱えるジレンマ③ 歩切根絶キーワード-原因は発注者の無自覚
2015/04/01特集企画/PR
建設メール
「歩切り」とは、「設計書金額の一部を控除する行為」と国土交通省は言っている。設計金額1000万円のものを単純に1割カットして、900万円をするような行為で、これは改正品確法の「予定価格を適正に定める」に違反しており、はっきり「違法性がある」と指摘されている。
国交省では、歩切り廃止へ向け、リーフレットの作成や実態調査を進めているが、このところ新たに指摘されているのは、歩切り以前の「割り切り」とも呼ばれる行為。歩切りが設計金額の一部をカットするのに対し、「設計金額そのものを低く出す」行為がこれにあたる。これも「予定価格を適正に定める」とした改正品確法に違反する行為ではないだろうか。
設計金額を算定する際に、コンサル企業に「いくら以下に抑えるように」と具体的な金額を指示しているケースもあると聞く。「予算で工事費が決まっているから」が大きな理由だ。指示されたコンサル企業も積み上げで行っているので、金額を操作することは難しいが、機器などのメーカーから徴収した見積り単価そのものをカットするなどのテクニックで設計金額を合わせる。
ここで一番の問題は、「そうしないと予算をオーバーするから」と発注者の多くが平然としている点だ。罪悪感なく、こうした行為をしており、むしろ予算内に抑えた、低い工事費にできた、と達成感すら持っている人もいるようだ。地方議員の中にも、そうした考え方を持つ人がいると聞く。泣くのは受注者だけだ。
「割り切り」も含めた歩切り問題。原因は、法律違反であることの認識のなさ。つまりは「発注者の無自覚」とも言える。「改正品確法の周知を」とは決まり文句のように言われていることだが、「周知」がいかに重要か、歩切りを考えただけでも見えてくる。