見たもん勝ち ～建設業応援団～
〈日々の栞〉 一部に刺さるツアー
2025/11/10コラム
日々の栞
▼新潟市内の建設コンサルタント業者が新たな事業を始めた。技術士がツアーガイドとなり、新潟県内の地形や地質、治水や土木技術などに焦点を当てた受注型の企画観光事業で、2025年度から本格的に事業を開始。観光庁の24年度地域観光新発見事業に採択され、旅行会社や広告代理店が協力する
▼ダム見学などの通常のインフラツーリズムとは違い、施工や工作物を見るのではなく、地形・地質そのものの成り立ちを専門家の観点から見て学ぶ。巨大コンクリート構造物などの見学と比べるとややキャッチーさに欠ける印象は否めないが、プレス向けの体験会に参加してその印象は覆った
▼体験会は新潟市内の角田浜で開催された。市内中心部から車で40分ほどの場所にある海水浴場で、一見して何の変哲もないように見える。オープン前の浜茶屋でツアーに当たっての講義を聴いた
▼角田浜に隣接する角田山は、約1600万年前に日本海の海底から噴出した海底火山で、約200万年前からの隆起運動によって今の山地を形成し、隣接する角田浜は溶岩が堆積して形成されたことを知った。角田山があることで信濃川が今の形状となり、信濃川の大きな三角州の部分が現在の越後平野となったのだ。一見して何の変哲もなかった風景は、超ダイナミックな自然現象の産物だった
▼ガイドを担当した技術者は大ベテランで、自身が研究し、これまでに集めたデータを惜しみなく使ったツアー資料も圧巻だった。観光という新たな事業でありながらも、本業の成果や経験が生かされており合理的だ。マニアックな内容ではあるが、好きな人には刺さりそうだ。（新潟・KW）
