見たもん勝ち ～建設業応援団～
【提言】 コロナ禍と建設業の行方②（埼玉県）／施工現場へIT導入／具体的な実施プラン描け
2020/12/04特集企画／ＰＲ
建設メール
IT化がしづらい、建設業の施工現場でも「待ったなし」の時代が来ている。新型コロナウイルスの感染リスクを減らすため、現場へ頻繁に足を運ばなくても現場管理ができるITツールの利活用は、重要な課題だ。だが具体的に、どのように導入するかという話になると、立ち止まる企業は多い。しかし埼玉県内には、先進的な取り組みを進める企業がある。
地域密着型の総合不動産業として、新築戸建て住宅も扱うケイアイスター不動産㈱（埼玉県本庄市、塙圭二社長）は10月、建築現場の管理効率化を目的に、現場管理アプリ「KIzuku PRO」を導入したことを発表した。既存サービスを独自改良したもので、協力会社も参加するグループチャットを基盤として、現場の進捗確認や工程表・図面・報告書などの情報共有がモバイル端末で可能となる。
「現場監督が忙しくて疲弊していた」とアプリ導入のきっかけを語るのは、事業を推進したITサポート課の参与。同社の分譲住宅では、一人の現場監督が管理する物件数は、注文住宅の数倍に及ぶ。「1件当たりの作業は30工種以上。各工程それぞれに作業を行う職人がいる。連絡はすべて現場監督を介して行われた」「工期や近隣の方への対応にも追われていた」と、当時の状況を振り返る。 2017年2月、課題解決に向けて導入に着手。自社の要求水準に合ったサービスの選定に加えて、現場の声も反映していく。最大の課題は「いかにして、協力会社の理解を得られるか」だ。関連する企業は数千社に及ぶ。当初、協力会社を集めた会議で説明を行うも、約8割の企業が反対。各社に対して個別に説明を行う、地道な取り組みを行った。
導入に不可欠なのがスマートフォンの利用だ。「業界の高齢化もあってほとんどの職人が利用していたのが、いわゆるガラケー。通信キャリアとも協力して、スマートフォン導入への理解を促した」と苦労を話す。
18年10月からアプリの本格的な運用を開始した。20年のコロナ禍では「テレワークに、柔軟に対応できる」ことに加えて、資材調達においても効果を発揮。2月にコロナ感染が広がる中国での部品生産が停止し、建設業において多くの現場で建築設備の供給に遅れが生じる中でも「アプリを活用し、着工前までに資材発注をすべて終えていた」ことで、供給遅延はほとんど生じなかった。
あらゆる産業で非接触が叫ばれる中、なぜITツールを導入するか、から「いかに導入するか」という段階を迎えている。関係者との課題や認識の共有など、具体的なアクションプランを描けるかが、建設業の行く末を左右するだろう。
（つづく）
