見たもん勝ち ～建設業応援団～
【提言】 コロナ禍と建設業の行方⑤（山梨県）／公共事業の影響軽微／店舗設備改修補助は好調
2020/12/09特集企画／ＰＲ
建設メール
新型コロナウイルス感染症の第1波が到来した4月ごろ、山梨県内の公共事業に大きな影響は見られなかった。県営繕課は最初のウイルス感染が拡大する中、主にトイレの便器や照明器具、エアコン、流し台などが入手しづらい状況であったが、大幅な工期の遅れなどは無かったと報告している。ただし業界によっては「今でも全面回復には至っていない。影響はまだ残っている」との声も聞かれる。
一方で民間工事については、大手化粧品メーカーのコーセーが南アルプス市に建設を計画していた工場の稼働を1年程度延期することを発表。設備関係の業者からは打撃は大きいとの声があった。工場は約11万㎡の敷地に最大で250億円を投じる計画。着工は夏ごろを予定していた。工場の事業費もさることながら、山梨県は公共と民間における工事の割合が約半分ずつ。全国平均よりも民間工事の比率が低いことから影響が大きいことは想像に難くない。
コロナの影響を利用しようとする取り組みも県を中心に動き始めている。県はコロナを含め感染症社会からの脱皮を目指す「やまなしグリーン・ゾーン構想」を打ち出し、飲食業や宿泊業などを対象に店舗等の設備改修工事に対する補助を開始。6月補正予算で6億7500万円を計上した。1件当たりの補助限度額は150万円で「11月初めまでに527件の交付を決めている」（建築住宅課）と話す。 また県は都市部と地方部の両方で仕事や生活を送る「2拠点居住」を推進するため、9月補正予算で各種事業費を計上。県内の空き家を活用し事業を始めたい事業者と、空き家の所有者を仲介する「空き家活用マッチングビジネス」や「サテライトオフィス等の整備」などの検討を始めている。これらは東京圏から県内へ人を呼び寄せるほか、建設関係では事務所などの利用に向けた施設改修などが期待される。
サテライトオフィス等の整備も進める考えで、廃校舎や公民館、空き家などの改修経費を助成し、小規模のオフィス移転や社宅設置などに向け新たな支援策を展開する。
空き家活用マッチングビジネスでは改修費を補助するほか、より多くの事業者や所有者へ事業内容をPRするため、都内で「やまなし暮らし支援センター」やラジオなどを通じ積極的に情報発信する。
県は来年度予算における公共事業の規模が、国土強靱化緊急対策の期間延長により大きく左右されると見ている。また3月にまとめた社会資本整備重点計画（第4次）で、公共事業費を2021年度から3年間で2200億円投資するという目標を掲げた。民間投資減少の支えとなるよう公共事業費の投資規模拡大に一層の期待が寄せられる。
（つづく）
