〈壁耳〉 築地市場移転の報道から見えるもの
2016/09/01記者の目/論説
建設メール
デスク 「実は地元でも反対の人がいるんです」と言って反対派の人を出しているワイドショーを見ていると特にそう感じる。あれだけ大きな施設だから、移転には反対の人も当然いる。だけど、総合的に考えて移転が妥当だという結論が出て進んできたものなのだが、こうした報道の仕方が八ッ場ダムの時とまったく変わっていない。
記者 どうしてそういう報道が続くのか。
デスク 見る側の問題もあると思うが、公共事業についての正しい理解が足りていないのだろう。公共事業とは、言葉通り公共のためのもの、全体にとって有益な事業をするもので、100人いて100人が「嬉しい」という事業はありえない。道路を通そうとすれば、用地がかかるため移転せざるを得ない人もいる。その人にとっては、迷惑なだけだが、それでも道路が通ることによる経済効果だったり、利便性の向上だったりのために我慢する。
「公共」の対義語は「私的」。公共事業のことであるのにもかかわらず、「私」の意見を取り上げるという矛盾をテレビは平気でするし、視聴者側もそれを受け入れてしまう。今回の築地市場の話は、今のところ建設業界が悪者になる話ではないのだが、こういう報道を見ると、相変わらず公共事業に対する理解が進んでいないなと悲しくなる。
記者 整備事業費が大幅に増えたことを、新国立競技場の問題と同じ様に報じる傾向もありますね。
デスク 問題があったとはいえ新国立競技場は日本スポーツ振興センターという独立行政法人が整備する施設。豊洲新市場は東京都が整備する施設で、当然ながら都議会での審議を経て承認されているもの。それを同じ様に報じるから話がややこしくなる。
記者 参議院議員に当選した足立さんも一般紙やテレビには期待できないと言っていますね。
デスク そうだね。ここ何年か業界は一般紙に理解してもらおう、正しい報道してもらおうと努力してきたが、効果があったとは思えない。自分たちで直接発信するしかないと言っている。こういう報道を見ていると、本当に期待ができないなと改めて思う。