見たもん勝ち ～建設業応援団～
〈壁耳〉 「建設工事受注動態統計」の問題とは
2021/12/16記者の目／論説
建設メール
記者A 国土交通省が毎月公表している「建設工事受注動態統計調査」の数値を無断で書き換えていたことが問題になっているね。臨時国会では、岸田文雄首相や斉藤鉄夫国土交通大臣が遺憾の意を表明し、再発防止に努める意向も示しているが、実際には何が問題なのかな。
記者B 同統計は、建設業者が公共発注機関や民間から受注した実績を集計したもので、都道府県が業者側の調査票を取りまとめ、国交省に提出している。月末に締めて翌10日に報告してもらうのだが、当然ながら締切から遅れて提出されるものが出てくる。その分を過去の数字に足し合わせていたということ。ただし会計検査院からの指摘を受けて、今は集計方法を変えている。
記者A 確かに勝手に数値の書き換え作業を行うことは問題だが、より正確な統計になっているということなのでは。
記者B その通り。そもそも2012年度までは、締切を過ぎたものは未回答業者として「実績なし」として取り扱っていた。つまり本来は集計されるべき実績が加えられていなかったということ。国交省の担当者も「業界の実態を反映させるため、遅れて提出されたものであってもカウントしたかった」としており、不適切な操作をしているという認識はなかったという。ただし、重要な「基幹統計」であり、二重計上の可能性や、軽微であっても各種統計に影響を及ぼしかねないことから「適切な取り扱いではなかった」としている。
記者A GDP（国内総生産）の算出に影響を与えたのではないかという報道も出ているが。
記者B 会計検査院からの指摘を受け、20年1月から是正措置を講じているので、最近の各種統計に影響を与えているとは考えにくい。統計の性質上、過去との比較が必要となるため、新たな推計方法による値での公表は本年4月から行っている。20年1月から21年3月までの値は、従来の推計方法で公表してきたものではなく、新しい推計方法で取った場合の値を仮に試算したものを用いている。少なくとも20年度と21年度分に関しては、GDPの算出等に与える影響はないだろう。
記者A 同統計では「大手50社調査」も行っているが、こちらへの影響はないのか。
記者B 大手50社調査は、文字通り50社に対して調査を行っているので関係ない。今回問題となった統計の方は、調査結果を建設業許可業者全体へ復元する「母集団推定」を行っている。国交省によると、新たな推計方法に変えたことで、より精緻に復元することができているという。実は、本年4月から6月の受注高合計は前年度比でいずれも2桁の増加となっている。4月から10月までで比較しても6・5％増だった。もちろん、昨年はコロナ禍だったので単純比較はできないかもしれないが。
記者A 過去の数字を足し合わせていなくても受注高は伸びているということか。「雨降って地固まる」になればいいね。
