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【広がるCCUS活用①】 24年度はモデル工事300件以上／7月から総合評価も加点／埼玉県
2024/06/13記者の目／論説
建設メール
建設キャリアアップシステム（CCUS）が2018年5月の事業者登録、19年4月から本運用を開始し5年が経過した。更新手続きも始まるなど、制度として運用が進んでいる。一方で、建設キャリアアップシステム運営協議会は、重点項目に地方、2次下請け以下、設備・住宅関係などの技能者・事業者登録の促進、就業履歴の蓄積促進等の現場利用推進を掲げている。現場利用の最たるものとして、公共事業ではモデル工事の実施などが想起される。日本工業経済新聞社は、本社と支局ネットワークを生かし関東甲信越の状況を「ニュースの交差点－広がるCCUS活用－」と題し、全7回で紹介する。第1回は埼玉県。
埼玉県県土整備部は2024年度、CCUS活用モデル工事を発注者指定型で300件以上適用する目標を掲げた。同部の年間発注工事はおよそ1000件なので、3割に相当する。また総合評価方式での加点措置も始める。7月公告分の工事から、「土木型」「技術提案型」などで選択項目として運用する。
登録状況は事業者約7割、技能者約6割で、全国的にも高い数字となっている。要因として「先導している都内大手の下請けに入る専門工事業が多い」（業界団体幹部）ことが考えられている。
地場の建設会社に浸透させるため、5月末には地域機関（杉戸県土整備事務所）と建設業協会支部（杉戸）とが共催で、初の研修会を行った。建設業振興基金から講師を招き、経験に応じた処遇改善などのメリットを学んでいる。
カードリーダー購入費補助や、工事成績評定の加点（項目:創意工夫）も行ってきており、適用工事件数は順調に伸びている。初年度の21年度は17件（うち発注者指定型が16件）、22年度49件（同39件）、23年度126件（同122件）だった。他部局への水平展開も図っており、例えば都市整備部は23年度に18件の実績となっている。
県に続きCCUS活用モデル工事で試行錯誤するのが、さいたま市。24年度は試行開始から3年目となる。市の運用ルールも国や他自治体などとほぼ変わらず▽事業者登録▽技能者登録▽管理者ID登録▽カードリーダー設置▽就業履歴情報登録―の5項目の実践を求めている。
達成できた場合、工事成績評定に加点。実工期が30日未満の工事や、緊急対応が優先される案件などは対象から外している。
CCUSは技能者の処遇を改善し、建設業界の魅力を高める取り組みで、その目的に非の打ち所はない。総論では誰もが賛成する。ただ受発注者の双方から話を聞くと、潜在的な課題も指摘されている。
総じて言えばコストの話で、大手ゼネコンと違い中小企業にとっては、無視できないというものだ。当然、中堅技能者（レベル2）や職長（レベル3）、登録基幹技能者（レベル4）には、そのキャリアに見合った金額を支払うことになる。
発注者が適正な工期確保、スライド適用などをきちんと行ったとしても、現場では往々にしてイレギュラーなコストが発生する。「その時に、最もしわ寄せが行きやすいのが人件費」（発注関係者）というわけだ。
このほか「仕事が取れなくなるので導入しているが、短期でのメリットは特にない」（受注者）という声もあった。
働く人を大切にする、業界のイメージを良くするという視点自体は大切なもの。関係者一丸となって、中長期の視点で育てたい。
