見たもん勝ち ～建設業応援団～
【広がるCCUS活用④】 総合評価へ加点対象も／多能工の評価基準が必要／山梨県
2024/06/18記者の目／論説
建設メール
全国的に普及が遅れているとされる建設キャリアアップシステム（CCUS）について、全国で一番初めにシステム登録を総合評価の加点対象とした山梨県。しかし、システムへの登録者は鈍化している。その背景について、関係者に取材を行うと、土木工事のさまざまな作業に携わる多能工がメリットを感じにくいという側面も見えてきた。
山梨県はCCUSの活用に取り組んでいる企業を評価することを目的に2019年に全国で初めて総合評価方式の評価項目に「技能者の登録」を追加。事業者と技能者が登録している場合に評価点2点を加点している。対象となるのは3000万円以上の土木一式工事で、企業と自社の技能者が入札参加申請締め切り日までに登録すれば評価となり、申請中や企業が所属する技術者いずれかの登録だけでは加点されない仕組み。
 |
|
総合評価－企業の信頼性社会性の項目で加点
|
登録が総合評価の加点対象となったと同時に県内の建設事業者の多くが登録を済ませ、その後、企業に所属する多くの技能者が続く流れとなった。
山梨県における24年4月30日時点でのCCUSの登録累計数は技能者8228人、登録事業者数は1414社。約2・5倍の人口を有する隣県の長野県と比較すると、長野県の技能者1万9152人、登録事業者数3349社とそれぞれ約2・3倍の数字で、人口に対する普及率は同水準となっていることから、CCUSを加点対象とする総合評価方式の導入直後は、登録者数は増加したものの、その後の登録者数はゆるやかな増加にとどまっている。
県内の建設企業や技能者にCCUSの運用について聞くと、リニア新幹線高架橋など大手ゼネコンの事業所ではカードリーダーが設置してあるのが当たり前になっているという。下請け企業の登録状況については、技能者の多い比較的規模の大きな事業者の登録者率は高いとしながらも、小規模な事業所では現場に来た技能者全員がまだ登録をしていないという場合もあるという。
現行のシステムでは職種ごとに基準が設定されていて、鳶職や鉄筋職人などは職種ごとの就業履歴が蓄積される。専門的な職種の場合、全国的な組織もあることから、CCUSのレベルアップ判定などが解りやすく明確になっている。
一方、土木工事の現場でブロック積みや型枠の設置から重機の運転など、幅広い作業に携わる「多能工」には評価基準が無く能力評価の部分がぼやけてしまい、あまりメリットを感じないという意見もある。今後、土木工事の現場では技術者不足に伴い、一人でさまざまなタスクをこなす多能工による施工体制は増加が見込まれる。この多能工の能力評価基準を策定し、魅力を感じさせる取り組みやPRが必要だ。
なお、山梨県ではモデル工事実施に向けた検討も進められており、今後の動向を注視したい。
