見たもん勝ち ～建設業応援団～
【高校生作文コンクール・不動産・建設経済局長賞】 「私の憧れ」柳田菜々美さん（茨城県立土浦工業高等学校土木科2年）
2020/11/30建設時事
建設メール
私の祖父は、栃木県の渡良瀬川水系で砂防ダムの建設に32年携わってきた。真冬に「今日は暖かいな」といってマイナス5度、「今日は寒いな」といってマイナス15度、そして真夏は35度を超える。真っ黒に日焼けして、手指なんかボロボロで、血豆に血豆をこさえる。祖父はそんな過酷な状況下でも愚痴を1つもこぼさず、現場監督として「絶対に事故は起こさない、必ず完工させる」という熱い想いを持って工事に取り組んでいた。
砂防ダムと聞いて、八ッ場ダムのようにデッカイ物を真っ先に思いついた。だが、物心がついたころ砂防ダムについて調べた私はショックを受けた。こんなものか。そんな考えを持っていた私を祖父は現場に連れて行ってくれた。
「じぃが作っていたのはこんなに大きいものだったのか。」
その想いで胸が熱くなった。単に大きさだけでなく重要性や、建設に携わった人々の想い、期待、更には災害が起きた時の不安そんなものまで感じさせてくれるものであった。ある時私は祖父に問うた。
「ねぇじぃ。土木の仕事をしてて嬉しかったことって何。」
「局長賞ってでっかい賞貰ったことかなぁ。これだけはじぃが自慢出来ることさね。」
「ねぇじぃ。土木やってて辛くなかったの。」
「うーん。そりゃあ辛いことは沢山あったさ。」
そしてぽつぽつと話してくれた。
「災害への気配りだとか近隣住民が不安にならない説明だとか、いろいろ上手くやって当たり前だからそれなりに重くかかってくるもんはあったね。」
「今思うとよくやったよ。今でも工事のことはしょっちゅう夢に出てくるんさ。ははは。」
そう笑って答えてくれた。そんなに辛そうなのに、なぜここまでやってこれたのか不思議に思い私は問う。
「ねぇじぃ。どうしてそんなに頑張れたの。どんな思いで仕事してたの。」
「そうだなぁ。」
祖父は一瞬黙った。真っ黒に日焼けをした顔をしわくちゃにして私にこう語ってくれた。
「社会に出ると責任があるさなぁ。事故が起きないように安全第一で、発注者の希望に応える。会社のために、地元のために、人のために、家族のために。そう思って仕事してきたなぁ。そのたんびにあーあって思うよね。」
話を聞き終えた時私は涙した。こんなにも熱い想いを持って仕事をしていたのかと想像すると胸がいっぱいになった。
ここまでの努力や我慢、不安や期待を背負って来たからこそ賞につながり、人から信用される結果になったのだと私は思う。
私は高校2年生で進路を決めていかなければならない時期にある。今回の作文を書くにあたり、建設に携わる人々の熱量を肌で感じる事が出来た。こんな熱い想いを持った建設業に携わる人達がいる事を皆さんにも知って欲しい。そして私も、こんな格好良い大人になりたい。
