見たもん勝ち ～建設業応援団～
〈耳寄り〉 黒川紀章氏設計の名建築を3次元で保存
2022/04/19建設時事
建設メール
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ＡＲによりスマートフォン越しに
解体前のビルの姿（手前）を見ることができる
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東京・銀座にある、建築家の黒川紀章氏が設計したメタボリズム建築の代表作「中銀カプセルタワービル」で、老朽化に伴う解体工事が始まった。解体を前に、名建築の価値を後世に残すため、gluon（グルーオン、東京都目黒区）を中心に3Dデジタルアーカイブプロジェクトが動き出した。プロジェクトメンバーで建物を3次元計測し、3Dデータによる保存活動を行う。
1972年に完成した同ビルは、60年代に日本の建築家・都市計画家グループによって展開された建築運動「メタボリズム」の思想を体現する建物として、世界的に知られている。しかし、竣工から50年が経過して老朽化が進んだため、今月から解体工事に着手した。
記録に当たっては、ミリ単位で正確な距離を計測できるレーザースキャンのデータと、一眼レフカメラやドローンで撮影した2万枚以上の写真データを組み合わせて、建物全体をスキャンし、実空間の情報を丸ごと3次元データ化する。平面的な写真や図面だけでは記録しきれない複雑な形状、立体的な構造を記録することで、建物形状を正確に把握。デジタルアーカイブとして建築の記憶を後世に伝えていく。
計測した3次元データは、立体的な建築教材としての活用をはじめ、AR（拡張現実）やVR（仮想現実）、3Dプリンターを用いた模型製作など多様なメディア形式で再現・活用することが可能になる。
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今回のプロジェクトでは、3次元計測の費用やデータの制作費を集めるため、8月9日までクラウドファンディングを実施中。支援者には、同ビルをスマートフォンで見ることができるARも先行公開されている。目標金額を達成した場合は、多くの人に役立つよう3次元点群データをオープンソースとしてウェブサイトに無償で公開し、学術研究や新たな創作活動へつながる機会を創出する考え。
名建築はあらゆるところに存在するが、老朽化はいつか必ず訪れる。やむを得ず解体する場合でもデジタルアーカイブとして保存すれば、在りし日の姿を後世まで残すことができる。優れた建築物を保存する新たな手法として、今後も注目を集めそうだ。
